不動産ファンド2


受益権の譲渡の続きです。

<受益権の譲渡>
委託者は受託者にテナントビルを譲渡します。この結果、テナントビルの所有者は受託者である信託銀行に移転します。

一般的には、最初の受益者は委託者です。つまり、委託者はテナントビルを信託銀行に譲渡した代わりに、信託の受益権を受託者から取得するのです。

委託者が最初の受益者なので、このような委託者を「委託者権当初受益者」と呼びます。この時点では、委託者は、テナントビルを現金化できていません。

委託者権当初受益者は、受益者なのですから、受益権を有しています。この受益権は、譲渡できます。委託者は、受益権を第三者に譲渡することによって、テナントビルの現金化に成功するわけです。

ここまで、大丈夫でしょうか。

受益権が譲渡されると受益権を譲渡された新受益者は、信託銀行に対して「賃料を支払え」と請求できるようになるのは当然です。

こうして、テナントビルは、常に、受託者である信託銀行が所有しているのですが、信託の受益権、この場合、不動産信託受益権は転々と譲渡されるのです。

このように、信託の受益権は譲渡される性質を有していますので、金融商品取引法は、信託の受益権を有価証券とみなして、金融商品取引法の規制の対象にしたのです。

<みなし有価証券>
信託の受益権は、「賃料を自分に支払え」と請求する権利です。有価証券(モノ)ではありません。ところが、金融商品取引法は、有価証券(モノ)とデリバティブ取引を規制する法律です。

そこで、金融商品取引法は、信託の受益権という権利を有価証券とみなすことにしました。有価証券とみなせば、金融商品取引法の規制を適用できるからです。だから、信託の受益権が、「みなし有価証券」と呼ばれるわけです。

なお、「みなし有価証券」を信託の受益権、持分会社の社員権、組合等出資持分など金融商品取引法第二条第二項各号に規定された権利のことだと勘違いしている例が散見されます。

みなし有価証券とは、請求権であって、有価証券(モノ)ではないけれども、流通過程や仕組みに注目して有価証券とみなされる権利です。

ですから、金融商品取引法第二条第一項に規定されている有価証券(モノ)、例えば、株券の場合、株券が発行されないときは、株主が株式会社に「配当を支払え」「残余財産を支払え」と請求できる権利もみなし有価証券です。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

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川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。JSL行政書士事務所代表。

JSL行政書士事務所は、200社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

メールマガジン:、読者数国内最多の金融商品取引法専門メールマガジンを金融商品取引業者と金融当局に配信中

JSL行政書士事務所代表
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-3-2 郵船ビルディング1階
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