不動産ファンド7


組合等出資持分は、なぜ金融商品取引法で有価証券と定義されているのでしょうか。

<組合等出資持分の有価証券性>
例えば、美術品の鑑定家を含む数名の者がお金を出し合い、美術品の鑑定家に絵画を買ってもらい、高くなったら売り抜け、売却代金を出資者で山分けするという組合があったとします。

各組合員は、「売却代金のうち、自分の分を支払え」と請求する権利を持っています。この請求権を金融商品取引法は有価証券であるみなすと規定しているのです。だから、請求権はみなし有価証券と呼ばれるわけです。

組合の仕組み、ここでは組合等出資持分と呼びますが、組合等出資持分は投資信託に似ています。

投資信託は、投資家が金銭を投資し、運用会社が投資された金銭で運用を行い、運用から生じる収益が投資家に配当・分配される仕組みです。

美術品の例の場合は、出資者が金銭を出資し、鑑定家が出資された金銭で美術品を売買し、売買から生じする収益が出資者に配当・分配される仕組みです。

投資信託は、金融商品取引法の前身である証券取引法の時代から有価証券です。

ならば、同じような仕組みに基づく権利である組合等出資持分も有価証券とみなして金融商品取引法を適用し、出資者の保護を図るべきだと金融商品取引法は考えたわけです。

だから、組合等出資持分は有価証券とみなされた権利、みなし有価証券として定義されています。

<一般化>
一般化して説明すると、出資者から金銭の「出資」があり、出資された金銭で「事業」(運用)が行われ、事業から生じる収益が出資者に「配当」(分配)される仕組みにおいて、出資者が出資持分に応じて、配当を請求する権利が、みなし有価証券です。

組合等出資持分は、「ファンド」と呼ばれることが多いです。例に挙げた美術品のケースは、「絵画ファンド」あるいは「美術品ファンド」という感じです。

なお、ファンドは、もっと広い意味では、投資信託も意味します。ファンドという言葉を目にしたときは、組合等出資持分なのか、投資信託なのかを判断する必要があります。

<有価証券ではない組合等出資持分>
組合等出資持分に基づく配当請求権が有価証券とみなされる理由は、組合等出資持分が投資信託に似ているからです。

投資信託は、投資家が「他人」に運用を任せています。組合等出資持分も、例えば、匿名組合契約の場合、出資者は他人である営業者に事業を任せています。

であれば、出資者が自分自身で運用を行う場合まで、組合等出資持分に基づく配当請求権まで有価証券をみなす必要はありません。

したがって、出資者の全員が事業に関与する場合、組合等出資持分は有価証券とみなされません。

また、投資信託は、期待通りなら、投資家が投資した金額を超えて収益の配当や財産の分配を受けます。このことから、逆に、出資者が出資した金額を超えて配当や分配を受けることがないことを内容とする組合等出資持分は有価証券とみなされません。

さらに、投資信託は投資判断に基づいて運用されるものです。よって、役員等が会社の他の役員等と共同して会社の株券を、投資判断に基づかずに継続的に行う場合、つまり、従業員持ち株会も、組合等出資持分を有価証券とみなす必要がありません。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

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川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。JSL行政書士事務所代表。

JSL行政書士事務所は、200社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

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JSL行政書士事務所代表
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-3-2 郵船ビルディング1階
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