私募の取扱い(2)


4月1日施行の「売出しの定義の改正」と「私売出し」については、こちら<平成21年改正法>をクリックしてご覧ください。



不特定多数の者に対して有価証券の取得勧誘をする行為が募集、不特定でも少数の者か多数でも特定の者に対してのみ有価証券の取得勧誘をする行為が私募です。最初に、不特定でも少数の者に対してのみ有価証券の取得勧誘をする行為である「少人数私募」についてお話します。

<少人数私募>
少人数私募は、正確には、金融商品取引法23条の13・4項に「少人数向け勧誘」と定義されています。現行、少人数向け勧誘は、発行予定の有価証券、つまり、まだ発行されていない、存在していない有価証券の取得の勧誘を50人未満にする行為のことを指します。来年4月以降は、既に発行された有価証券、つまり、金融商品取引業者等が保有している有価証券の売付けの勧誘も50人未満にする行為は、少人数向け勧誘になります。いわゆる「私売出し」の1種です。

ちょっと複雑なことをお話しますが、正確にいうと、少人数私募は、発行前の有価証券の取得勧誘のことで、既に発行されて金融商品取引業者等が保有している有価証券の売付勧誘等は「私募」ではありません。金融商品取引法では、私募や募集のように「募」という文字は、まだ存在しない発行予定の有価証券の取得勧誘にしか使いません。だから、既に発行されている有価証券を50名未満に売付ける行為は「私募」ではなく、「私売出し」と呼ばれます。

さらに複雑になりますが、発行前の有価証券の販売は、売りとか売付けとかいいません。売買できるものは既に発行されている有価証券に限るからです。まだ発行されてない有価証券について、販売を意味する言葉は「取得の申込みの勧誘」です。投資家から見ると、これから発行される予定の有価証券の「取得の申込み」をすることになりますので、金融商品取引業者等から見ると、取得の申込みさせる行為、つまり、取得の申込みの勧誘となるわけです。

一方、既に発行されている有価証券は、「売買」できるものですから、金融商品取引業者等から見ると、「売付けの勧誘」か「買付けの申込みの勧誘」になります。売付け勧誘と買付けの申込みの勧誘を合わせて、金融商品取引法は「売付勧誘等」と定義しています。

<少人数私募の要件>
しつこいようですが、少人数私募とまとめて話をしていますが、正確にいうと、少人数私募(発行前)と私売出し(発行後)の要件のことです。本来、少人数私募と私売出しをまとめて表現する場合は、法令にある「少人数向け勧誘」と表現すべきなのかもしれませんが、業界では、まとめて少人数私募、あるいは単に私募と呼ばれていますので、ここでも、少人数私募と私売出しをまとめて少人数私募という言葉を使用します。

少人数私募の要件は、50名以上に取得勧誘をしないことです。「勧誘」をしないことですから、所有者の数は関係がありません。少人数私募の「結果」として、所有者が1名であっても、極端に言ってゼロであっても、取得の申込みの勧誘をする顧客の数が50名以上の場合、わかりやすく言い換えると、有価証券を紹介した相手方の数が50名以上である場合には、少人数私募ではなく、募集です。

来年4月以降、少人数私募の要件の一部が改正され、50名以上の者に「所有」されるおそれが少ない場合として政令で定める場合が加わります。これは、「勧誘」の相手方の数で私募か募集かを決める現行制度では、申込みのキャンセルがあったときに、追加勧誘をすることができないという不都合を解消するために改正されたものです。

ただ、(改正の趣旨から外れるためお勧めするわけではなく理論上の話程度ですが)政令に定める場合に該当している限り、50名以上が所有しない取得勧誘はOKというのですから、100人に取得勧誘をして抽選で49名を当選、10名を繰上げ当選とするなどすれば、発行開示をしなくても、募集と同じ効果を出すことが可能です。

政令で定める場合としは、上場された有価証券など明らかに大多数の者が所有する可能性がある有価証券の場合を除き、売却する際には分割して譲渡できない制限か、発行枚数や発行単位が50未満であってそれ以上細かくすることができない制限が記載された有価証券か書面を交付すれば、少人数私募になることが明示されました。いずれの制限も、50名以上の者が取得することがないようにする工夫です。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

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川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。JSL行政書士事務所代表。

JSL行政書士事務所は、200社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

メールマガジン:、読者数国内最多の金融商品取引法専門メールマガジンを金融商品取引業者と金融当局に配信中

JSL行政書士事務所代表
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-3-2 郵船ビルディング1階
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