私募の取扱い(3)


4月1日施行の「売出しの定義の改正」と「私売出し」については、こちら<平成21年改正法>をクリックしてご覧ください。



平成21年改正の金融商品取引法が来年施行されると、少人数向け勧誘に、現行の発行日前に取得勧誘を行う少人数私募に加えて、発行日後に売付け勧誘等を行う少人数私売出しが追加されます。また、適格機関投資家向け勧誘にも、現行の発行日前に取得勧誘を行うプロ私募に加え、発行日後に売付け勧誘等を行うプロ私売出しが追加されます。なお、特定投資家向け勧誘は、現行の金融商品取引法のもとでも、発行日前の私募と発行日後の私売出しが存在します。

少人数私売出しが追加されることに伴い、証券会社の業務は大きなインパクトを受けることになりますが、特に大きいのは、他社株転換社債の取り扱いに関する改正です。なお、この点は、今日までに金融庁から公表されている政令案と内閣府令案に基づいてコメントしています。政令案や内閣府令案が修正されれば、結論も変わってくることにご注意ください。

<他社株転換社債>
他社株転換社債は、他社株転換権付き社債とか、他社株転換可能社債など、他の名称で呼ばれることもありますが、いずれにしても、償還日に、償還金として投下資金が戻ってくる代わりに、株券が戻ってくる可能性がある仕組みが組まれた社債です。「他社株」と言っているのは、社債の発行者とは異なる会社が発行する株券で償還されるからです。(発行者が発行する株券で償還する社債は、単に、転換社債と呼ばれます。正確には、新株予約権付き社債です。)

仕組みはいたって単純で、他社株の株価が事前に定めたある一定の価格を割り込むと、金銭ではなく、他社株で償還される社債です。例えば、ソニーの株券を対象にした他社株転換社債の場合、ソニーの株価が、事前に定めたある一定以下になると、社債の償還日に投下資金の払戻しが行われる代わりに、ソニーの株券で償還される仕組みです。

<プロ私募>
復習になりますが、私募とは有価証券が不特定多数の者に譲渡される可能性がない発行形式です。このうち、多数であっても特定の者に対して発行される場合がプロ私募、不特定であっても少数の者に対して発行される場合が少人数私募、プロ私募と少人数私募の中間で、ある程度多数の特定の者に対して発行される場合が特定投資家私募です。

現行の金融商品取引法のもとでは、上場株券を対象にした他社株転換社債のプロ私募は禁止されています。プロ私募の場合、つまり、私募のうち、適格機関投資家のみを対象に有価証券が発行される場合、人数制限がありませんので、上場株券を対象にした他社株転換社債をプロ私募で発行してしまうと、償還された株券が私募ではなく、不特定多数の者に譲渡される可能性があるからです。改正金融商品取引法でも、この点に変更はありません。

さらに、改正金融商品取引法で導入されるプロ私売出しにおいても、同様のことが言えますので、プロ私売出しの場合も、上場株券を対象にした他社株転換社債の発行は禁止される予定です。-私募の取扱い(4)に続く-

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川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。現在、JSL行政書士事務所代表。多数の金融商品取引業者の顧問に就任。

JSL行政書士事務所は、100社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

メールマガジン:、読者数国内最多の金融商品取引法専門メールマガジンを金融商品取引業者と金融当局に配信中

JSL行政書士事務所代表
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-3-2 郵船ビルディング1階
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