投資顧問会社による有価証券の紹介


投資顧問会社に対する証券取引等監視委員会または財務局の検査が激しさを増しています。会社の規模の大小にかかわらず徹底的な検査と厳格な処分が毎日のように公表されています。投資顧問会社による法令違反は絶対に認めないという検査当局の決意の現われです。

<投資顧問会社による有価証券の媒介>
以前にもお話したことがありますが、投資助言・代理業の登録をしている会社が、有価証券を顧客に紹介するという金融商品取引法違反が絶えません。今回、ある会社であった指摘も同様のものでした。


無登録による有価証券の売買及びその媒介行為並びに投資助言業務に関して、顧客を相手方とした有価証券の売買の媒介行為

当社が行った上記の行為は、金融商品取引法第28条第1項に掲げる「第一種金融商品取引業」(同法第2条第8項第1号に掲げる「有価証券の売買」及び同項第2号に掲げる「有価証券の売買の媒介」を業として行うこと)に該当するものであり、当社が「第一種金融商品取引業」の登録を受けずに当該業務を行うことは、同法第29条に違反するものと認められる。

また、当社が行った上記の行為のうち、投資顧問契約の相手方に対する有価証券の売買の媒介行為は、金融商品取引法第41条の3に違反するものと認められる。

第一種金融商品取引業の登録をしていない投資顧問会社は、顧客に株価について助言をしたり、投資判断の助言をしたりすることはできますが、有価証券を紹介することはできません。今回は、未上場株の媒介をしたということが証券取引等監視委員会のホームページで明らかにされていますが、未上場株を顧客に紹介することもできません。

この会社は、再犯のためか、登録抹消になりましたが、無登録で取引を媒介することは、3年以下の懲役刑の対象ですので、起訴されなかっただけでも運が良かったと思うしかありません。

<有価証券の紹介と手数料>
有価証券を他人に紹介する行為は、いかなる場合でも、第一種金融商品取引業か第二種金融商品取引業です。これは手数料をとってもとらなくても同じであることに注意が必要です。金融商品取引業であるかどうかと、手数料を受け取れるかどうかは、一方は法律上の話で、他方が経済上の話でまったく関係がありません。

また、「紹介」することが金融商品取引業であり、「販売」したかどうかは関係ありません。「面白い株があるから買ってみないか」とか「この不動産信託受益権はお手頃ですので買いませんか」ということを言うことは、金融商品取引業です。私の過去の検査経験で「口をきいたら勧誘だ!」という指摘を受けたことがあります。要するに、「買ってみないか」と尋ねるために、電話をして「お世話になっております」と言った瞬間に勧誘であるということです。

この「口をきいたら勧誘」というのは数年前の金融庁のある検査官が複数の会社で言った言葉で、当時は、検査官の名前(仮称:A氏)をとって、業界では「A理論」と呼ばれていました。もっとも、これは極端な話で、いくら勧誘の意思があったとしても、電話をして「こんにちは」と言った瞬間に金融商品取引業になるという理屈は、今では通らないでしょうが、当局は、「勧誘行為」をかなり幅広く考えていることは確かです。

投資助言・代理業の登録を受けた投資顧問会社が「今こそ買い場!」と書くのは問題ありませんが、「今こそ、買いましょう!」と書くと、勧誘になり得るということに気をつけるようにしてください。前者は助言でしかありませんが、後者は買いを誘う行為=勧誘だからです。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

コメント

非公開コメント

プロフィール

川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。JSL行政書士事務所代表。

JSL行政書士事務所は、200社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

メールマガジン:、読者数国内最多の金融商品取引法専門メールマガジンを金融商品取引業者と金融当局に配信中

JSL行政書士事務所代表
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-3-2 郵船ビルディング1階
電話:03-5533-8785
http://office-jsl.com/

<お問い合わせ>
お問い合わせは、お問い合わせフォームで受け付けます。

<主な業務>
主な業務は、主な業務をご覧ください。

ブログの内容は個人的見解ですので、正確性は保証いたしません。また、ブログの内容に関する質問を含め、質問には一切回答いたしかねますので、ご了承ください。

プライバシーポリシー

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
Translation
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード