投資運用業の行為規制5


投資運用業者は、特定の金融商品、金融指標、オプションに関し、取引に基づく価格、指標、数値又は対価の額の変動を利用して、自己又は権利者以外の第三者の利益を図る目的をもって、正当な根拠を有しない取引を行うことを内容とした運用を行うことができません。

少し読みにくい条文です。

<自己の利益を図る運用の禁止>
自己、つまり、顧客のための運用ではなく、投資運用業者の余資運用であるとか、投資運用業者自身のための運用を行っている場合、自己のポジションに有利になるように、顧客のお金を運用してはならないという規定です。

例えば、投資運用業者が余資運用の一環として株を購入していた場合、株価が上がれば当然儲かるわけですが、顧客の資産を使って大量に株を買うことによって株価を引き上げるような運用をしてはならないという規定です。

運用方針に従って運用していたら、たまたま自己のポジションに有利に相場が動いてしまった、という場合でもこの規定は適用されるのかという検討が必要です。

結論から言うと、このような場合には、この規定は適用されません。

まず、運用方針に従った運用は、「正当な根拠を有」する取引であることが普通です。もっとも、運用方針が流動的であったり、あいまいであったりすると、正当な根拠を有するとは言えなくなってしまう可能性があるので、この点は注意が必要です。

また、顧客の資産を運用していたら、「たまたま」自己のポジションに有利になったときは、「自己・・・の利益を図る目的」(意図的)がありませんので、やはり、この規定の適用はありません。

もっとも、実態は、たまたま自己のポジションに有利になっただけであっても、検査実務においては、意図的に取引を行ったとみられるでしょうから、たまたまであることを証明できるようにしておかなければなりません。具体的には、運用方針通りに運用を行っただけであることを、明示的に記録しておくことが考えられます。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

プロフィール

川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。JSL行政書士事務所代表。

JSL行政書士事務所は、200社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

JSL行政書士事務所代表
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-3-2 郵船ビルディング1階
電話:03-5533-8785
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