投資運用業の行為規制6


投資運用業者は、原則として、顧客の財産について、損失補てんをすることが禁止されています。ただし、投資運用業者の損失補てんの禁止規定は、第一種金融商品取引業者や第二種金融商品取引業者のそれとは異なる規定です。

<損失補てんの禁止>
損失補てんが禁止される理由は、金商業者が損失補てんをすると、顧客と金商業者の間のトラブルになりやすい、金商業者が疲弊し投資者保護に反する結果になる可能性がある、顧客が安易に投資するため市場を歪める可能性がるからです。

投資運用業者は、顧客の財産の運用の結果、顧客に損失が生じた場合に損失を補てんしたり、利益が目標に届かなかった場合に利益を追加したりすることが禁止されています。

<行政処分と刑事罰>
第一種金融商品取引業者や第二種金融商品取引業者が損失補てんの禁止規定に違反すると刑事罰が科されますが、投資運用業者の場合は違います。投資運用業者の場合は、違反行為は行政処分の対象で、具体的には、金融庁による業務改善命令や業務停止命令の対象になります。

また、第一種金融商品取引業者や第二種金融商品取引業者は、違法行為の結果、あるいは、事務ミスの結果、損失補てんをしなければならないときには、金融庁の事前確認をもらったり、金融庁に事後報告をしたりしなければなりませんが、投資運用業者の場合は、違法行為の結果、あるいは、事務ミスの結果として損失補てんをする必要がある場合には、当然に、損失補てんをすることができます。(パブリックコメント436頁)

むしろ、運用財産の運用において事務ミス等の自己の過失により顧客に損害を与え、その損害について顧客に損害賠償を行わない場合は、忠実義務違反に該当する可能性すらあります。(金融庁監督指針Ⅵ-2-2-3(3))

<損失補てんと特別の利益の提供の関係>
なお、損失補てんの禁止と、特別の利益の提供の禁止は、内容が似ていますが、前者は、運用財産の取引から直接生じた損失の補てんに関する禁止規定であるのに対し、後者は、運用財産の取引に直接には関わらない事象で生じた利益の提供を含む禁止規定ですので、両者は明らかに異なります。

不動産AMである私のクライアントから「親会社とSPCとの不動産の売買の媒介を適法にする際、親会社から受領する媒介手数料を安くすることは損失補てんの禁止規定(利益追加の禁止規定)の違反になると弁護士から言われたのですが本当ですか?」と質問を受けたことがありますが、これは弁護士の間違いで、運用財産の取引から直接生じた損失の問題ではないため、損失補てんの禁止規定の違反ではなく、特別の利益の提供の禁止規定の違反の問題です。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

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川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。JSL行政書士事務所代表。

JSL行政書士事務所は、200社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

メールマガジン:、読者数国内最多の金融商品取引法専門メールマガジンを金融商品取引業者と金融当局に配信中

JSL行政書士事務所代表
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-3-2 郵船ビルディング1階
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