投資運用業の行為規制7


投資運用業者の禁止行為の説明の続きです。

<監査役等との取引の禁止>
投資運用業者は、運用財産と自己の監査役、役員に類する役職にある者又は使用人との間における取引を行うことを内容とした運用を行うことが禁止されています。利益相反の関係が生じるからです。

<権利者の利益を害する取引の禁止>
投資運用業者は、自己又は第三者の利益を図るため、運用財産の権利者の利益を害する異なる取引を行うことを内容とした運用を行うことが禁止されています。投資運用業者は受託者責任を負っていると解されるため、当然の規定です。

なお、金融商品取引法は、繰り返し「自己」という単語を使用していますが、自己とは、金融商品取引業者自身のことを意味します。役職員を指すのではありません。

ですから、権利者の利益を害する取引の禁止において、投資運業者の役職員は、自己ではなく第三者に含まれます。

<拘束を受けた運用の禁止>
投資運用業者は、他人から不当な取引の制限などの拘束を受けて運用財産の運用を行うことが禁止されています。投資一任契約は、顧客が投資運用業者の資質を信じて締結される契約ですから、投資運用業者は拘束を受けて自由裁量による取引ができないときには、運用を継続してはならないという意味の規定です。

<作為的な値付けをすることを目的とした運用の禁止>
投資運用業者は、有価証券の売買その他の取引について、不当に取引高を増加させ、又は作為的な値付けをすることを目的とした取引を行うことを内容とした運用を行うことが禁止されています。

これまでの禁止規定は、投資者(運用財産の資金の出資者)の保護を念頭に置いた規定ですが、作為的な値付けをすることを目的とした運用の禁止規定は、市場の公正性を確保することを念頭に置いた規定です。

上場株式を考えるとわかりやすいです。

上場株式の取引高が増加すると、活発に取引が行われていると投資家に誤解を与え、本来であれば取引に参加するはずのなかった投資家の資金を市場に流入させてしまいます。このような状況では、金商法の目的である「公正な価格形成」が阻害されるという弊害が生じます。

作為的な値付けは、直接的に、公正な価格形成という金商法の目的に反します。

金商法の目的である公正な価格形成を確保するため、金商法は、投資運用業者による作為的な値付けをすることを目的とした運用を禁止しているのです。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

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川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。JSL行政書士事務所代表。

JSL行政書士事務所は、200社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

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JSL行政書士事務所代表
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-3-2 郵船ビルディング1階
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