検査対策と検査対応


「検査対策」と「検査対応」が同じ意味でつかわれることがあるようですが、私がセミナーや金商業者のお客様たちと定期的に行っている勉強会でお話しするときには、明確に意味を分けて使っています。

<検査対策>
検査対策とは、証券取引等監視委員会(財務局)の検査が入る前に、金商業者が行うべき対策のことです。「事前準備」と言えば分りやすいかもしれません。

検査対策には、さまざまな準備がありますが、お客様を見ていると、基本動作ができていないケースが目立ちます。

例えば、変更届出書の未提出。登録申請書や登録申請書に添付した書面の一部に変更があった場合には、変更から2週間以内、あるいは、遅滞なく金融庁(財務局)に変更届出書を提出しなければなりません。

金商法上の基本的な義務の一つです。

検査に入る証券取引等監視委員会(財務局)の立場に立てば「こんな基本的な義務も遵守できない会社が、行為規制(業者規制)を遵守できるはずがない!」というように見えますから、変更届出書の提出は非常に重要です。

余談ですが、変更届出書の提出で、一点、実務的に注意しなければならないことがあります。

「変更届出書」とは、文字通り読むと、変更した「後」に金融庁(財務局)に届出すればよいように見えますが(法制度はそうなっている)、実務的には、モノによって、変更する「前」に金融庁(財務局)に相談して、内容を詰めておかなければならないものがあります。

「おかしいじゃないか!」と文句を言う人(特に、この金融行政の常識を知らずにお客様の前で恥をかかされた弁護士さん)がいらっしゃいますが、金融行政は、法令ではなく実務がすべてですので、怒っても仕方がありません。

私は、仕事柄、金商業者の皆様の検査対策のサポートをしていますが、まず見直すべきは、基本動作です。

<検査対応>
これに対し、検査対応とは、検査が入った後の対応のことです。検査期間中に何をしなければならないか、何をしてはいけないのかという対応のことです。

検査対応は、検査を実際に経験しないとわからないことです。また、多岐にわたります。

おもしろかった「べからず」集から一つご紹介すると、検査官をお客様と思ったのか、検査官にお茶を用意した金商業者がいました。この金商業者が、こっぴどく主任検査官から怒られたことは言うまでもありません。

大蔵省時代の検査ならともかく、今の検査では、金商業者が検査官にお茶を提供するのも「癒着」と見られかねないので、ご法度なのです。

<検査対応請負業者>
なお、「検査対応(あるいは検査対策)のサポートできます!」と宣伝し、500万円から1000万円(中には50万円という破れかぶれの会社も)の報酬を得ているコンサルティング会社がありますが、依頼する前に、必ず聞いてみてください。「お宅の職員には、証券取引等監視委員会(財務局)の検査を、金融機関のコンプライアンス部長として受けた経験がある人がいますか?」と。

私の知る限り、皆無です。

検査ではコンプライアンス部長が唯一の責任者になります。だから、コンプライアンス部長以外は、本当の意味で検査に立ち会っていません。証券会社や投資運用業者の勤務経験があっても、コンプライアンス部長の立場で検査を受けたのでなければ、検査で何が起きているのか、実はわからないのです。

おもしろいところでは、「私は金融庁で検査官をしていました!」と宣伝している弁護士がいます。私は、金融機関のコンプライアンス部長だったとき、そういう弁護士に検査対応のサポートを依頼したことがありません。検査をする人と受ける人ではまったく立場が違います。検査をする側の人は、検査を受ける側が何をしているのか、皆目見当がつかないからです。

<セミナーのご案内>
検査対策と検査対応については、金融財務研究会が主催するセミナーで、私が講師を務め、3時間みっちりお話ししています。今回で3回目になりますが、おかげさまで、既に多くの方から申込みを頂いているようです。

今回は最新情報も反映させさらに内容が充実しています。ご都合がつく方は、ぜひ、ご参加ください。

詳細は、こちらです → < http://www.kinyu.co.jp/cgi/seminar/260353.html >

なお、お申し込みされる方は、申込フォームの備考欄に「講師の紹介」と書いてください。34,000円の受講料が29,000円になるそうです。

<面談の受付>
また、今年から、時間が許す限り、検査や普段の業務に関する個別のご相談も極力受けることにしました。面談をご希望される方は、「面談希望」と書いたメールをyoshinori-kawasaki@tkao.comにお送りください。最初の1回1時間まで、無料で面談し、ご相談を承ります。

面談は、本当に時間が許す限りとなりますので、お断りすることがあります。また、私は弁護士ではありませんので、争い事などのご相談は受けられません。あらかじめご了承ください。

<行政処分の結果>
検査を受けて行政処分を受けるとどうなるかというと、顧客離れが加速します。例えば、投資助言業者の場合、解約が相次ぐことがあります。不動産AMの場合、レンダーが全員引く可能性があります。当然と言えば当然で、行政処分を受けた金商業者と取引を継続したいと考える取引先はいませんよね。

だから、検査対策や検査対応は、好むと好まざるとにかかわらず、金商業者の皆様には必須なのです。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

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プロフィール

川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。JSL行政書士事務所代表。

JSL行政書士事務所は、200社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

メールマガジン:、読者数国内最多の金融商品取引法専門メールマガジンを金融商品取引業者と金融当局に配信中

JSL行政書士事務所代表
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-3-2 郵船ビルディング1階
電話:03-5533-8785
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