特例業務届出者


金融庁は、行政書士に金商法関連の手続代行をさせない方向に動いているようですが、確かに、無理からぬところもあるように思います。

最近、お客様から聞いた話では、適格機関投資家等特例業務の届出を行政書士に代行させたところ、行政書士が財務事務所の質問に答えられなかったので、届出が受理されなかったということです。

笑えない話ですので、適格機関投資家等特例業務についてあらためて確認しておきます。

<自己募集>
特例業務届出者は大きく分けると2つの業務ができます。一つが、「自己募集」です。組合等を組成した業務執行組合員(営業者やGP)が、出資者を自ら集める行為を、金商法の言葉ではありませんが、自己募集と言います。

本来、自己募集は、第二種金融商品取引業者として登録を受けていない者はできません。やってしまうと、最悪、懲役刑です。

特例業務届出者は例外の一つです。特例業務届出者は、登録を受けず、届出だけで自己募集をすることができます。

<自己運用>
もう一つ、特例業務届出者は、自ら投資運用業ができます。投資運用業とは運用財産の過半数を有価証券やデリバティブ取引で運用する行為です。

本来、自己運用は、投資運用業者として登録を受けていない者はできませんが、特例業務届出者は、登録を受けずに、届出だけで自己運用をすることができます。

<適格機関投資家要件>
特例業務届出者が、登録を受けた金融商品取引業者と異なる点は、出資者に最低1社、適格機関投資家を確保しなければならない点です。また、他の投資家(一般投資家といいます)は、半年通算で49名以下にしなければなりません。

<あり得ない失態>
財務事務所で、行政書士の隣で聞いていたお客様によると、適格機関投資家等特例業務の届出を代行した行政書士は、特例業務届出者は自己募集か自己運用あるいは両方を行う者であるにもかかわらず、「届出者は自己募集も自己運用も行いません」と言ったそうです。これが最初の失態。

次の失態は、最低1社必要な適格機関投資家の予定を記載する欄に「該当なし」と書いたことです。

いずれが欠けても、適格機関投資家等特例業務の要件を満たしません。

<仕業の選別>
困って私のところに相談に来られたお客様がやりたいことは何かを聞いた私が出した結論は「適格機関投資家等特例業務の届出はやめるべき」でした。理由をご説明すると、お客様にご納得していただけました。

余談ですが、私は、金商法関連の手続については、行政書士に厳しいです。金商法の手続は比較的高額であるという理由だけで、金商法を斜め読みして手続代行するからです。結果として、お客様に多大な迷惑をかけているからです。

何どもいいますが、「金商法が本当に得意」なんていう行政書士はまずいません(弁護士もしかりです)。試しに、金商法の条文の中でも、金商業者の皆様が最も注意しなければならない規制の一つである「損失補てん」の要件を「正確に」回答するように迫ってみてください。回答できる人は一人いれば良い方です。

仕事を通じてお客様と話をしていると、弁護士もひどいもので、先日直接聞いた話では、コンプライアンス担当者が、「当社はまだ体制整備ができていないから登録は時期尚早」と言っているのに、社長から登録の依頼を受けていた弁護士が、仕事を奪われると思ったのか「体制整備と登録は別問題。あなたが登録の邪魔していることを社長に直訴する」と脅したそうです。

金融庁は、金商法関連の手続きを代行する行政書士や弁護士には、職務経歴書を提出させ、審査すべきです。

なお、先ほどの事例で、弁護士が迂闊だったのは、コンプライアンス担当者が次期社長候補であることを知らなかったことです。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

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川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。現在、JSL行政書士事務所代表。多数の金融商品取引業者の顧問に就任。

JSL行政書士事務所は、100社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

メールマガジン:、読者数国内最多の金融商品取引法専門メールマガジンを金融商品取引業者と金融当局に配信中

JSL行政書士事務所代表
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-3-2 郵船ビルディング1階
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