私募の取扱いについて蔓延する誤解(1)


私募の取扱いについて、特に、二種業者や無登録者の間で、誤解が蔓延しているような印象を受ける問い合わせがありましたので、ここで、私募の取扱いとはどのような行為かを明確にしておきます。

<当事者>
有価証券(二項有価証券を含む)の私募の取扱いは、金融商品取引業です(金商法2条8項9号)。ですから、金融商品取引業者の登録を受けていないとできません。

また、私募の取扱いに関する契約は、金融商品取引契約(金商法34条)です。

以上から、私募の取扱い契約を締結する者は、金融商品取引業者として登録を受けた者でなければできません。

私募の取扱いとは、有価証券の私募を行う者、つまり発行者に代わって、新たに発行される有価証券の私募を行うことを約束する行為です。

「私募を行うこと」が私募の取扱い契約ではなく、「私募を行うことを発行者に約すること」が私募の取扱い契約です。

ですから、契約の当事者は、「発行者」と「金商業者」で、投資家は関係がありません。

<成立時期>
私募の取扱い契約の成立時期は、したがって、発行者が金商業者に発行者に代わって私募を行うよう申し込み、金商業者が承諾したときに成立します。

つまり、金商業者が実際に投資家にコンタクトしたかどうかを問わず、発行者と金商業者の間で私募の取扱いに関する合意が形成されたときに、私募の取扱い契約は成立します。

例えば、ファンドの事業者が金商業者に「ファンドの投資家を探して欲しいんだけど」と言ったとき、金商業者が「了解!」と言った瞬間に、私募の取扱い契約は成立します。金商業者が、投資家にファンドの取得勧誘(私募)を実際に行ったかどうかは関係がありません。

<誤解>
したがって、例えば、ファンドの事業者が「ファンドの投資家を探して欲しんだけど」と金商業者の登録を受けていない無登録者に話しかけ、無登録者が「了解!」と言ってしまうと、この時点で、無登録者の行為は無登録営業となり、懲役刑の対象になってしまいます。

「いや、投資家に取得勧誘(私募)を行っていないんだから、無登録営業にはならないだろう」というのが誤解です。

繰り返しになりますが、私募の取扱い契約の当事者は、有価証券の発行者と、有価証券の発行者に代わって有価証券の取得勧誘(私募)を行う者であり、契約の成立時期は、両者の合意があったときですから、投資家に対する勧誘行為があったかどうかは、関係がないのです。

念のためですが、私募の取扱い契約は投資家に対する勧誘行為とは無関係にもかかわらず、なぜ、金融商品取引業として規制を受けるかというと、投資家ではなく、発行者の利益を守るためです。

私募の取扱い契約の当事者は、発行者と発行者に代わって私募を行う者なのですから、当然です。

金商業者の登録を受けていない者は、発行者から有価証券(ファンドを含む)の投資家を探して欲しいと言われても絶対に「了解!」と言ってはならず、「金商業者でないのでできません」とお断りしなければ、懲役刑の対象になってしまいます。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

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川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。現在、JSL行政書士事務所代表。コンプライアンス・リスク管理コンサルタントとして、上場会社、が外資系企業など多数の金融商品取引業者の顧問に就任。

JSL行政書士事務所は、100社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

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