外国証券の取り扱い(2)


4月1日施行の「売出しの定義の改正」と「私売出し」の最新情報については、こちら<平成21年改正法(12)>を以降をご覧ください。



外国で発行され、国内で発行されなかったために、国内で「開示」が行われず、また、「譲渡制限」も付いていない外国証券にのみ「私売出し」という概念が適用されるというところまで、前回はお話ししました。外国証券の「売出し」と「私売出し」について、もう少し、正確に見ていきましょう。

<外国証券の売出し>
外国証券の売出しは、国内証券の売出しと同じです。既に発行されて市場で流通している有価証券なんだけれども、不特定多数に譲渡される可能性があり、それにもかかわらず開示が行われていない有価証券は、外国証券でも国内証券でも、「売出し」の手続きに従わなければ、投資家に売り付けることはできません。

売出しの手続きとは、基本的に「有価証券届書」の提出です。継続開示をしているなど一定の条件が整っている企業が発行する有価証券の売出しの際には、「発行登録制度」が利用できます。

有価証券届出書とは、売付けが行われる有価証券の発行者の情報である「企業情報」と売付けが行われる有価証券そのものの情報である「証券情報」の2つが詳細に記載された書類です。EDINETという電子情報開示システムで公開されます。発行登録制度とは、発行される有価証券の総額をあらかじめ登録しておいて、1年ないし2年は、総額の範囲内で有価証券を機動的に売り付けることができる制度です。ただし、発行者は、売付けのたびごとに発行登録追補書類という書類をEDINETで公開しなければなりません。

<外国証券の私売出し>
① 少人数私売出し
売出しが不特定多数の投資家に有価証券を売り付ける行為であるのに対し、少人数私売出しは、不特定でも少数の投資家に有価証券を売り付ける行為です。少数とは、50名未満と定義されています。少人数私売出しは、多数の者に譲渡されないように、有価証券に「譲渡制限」を付けて行われます。この譲渡制限は有価証券が償還されるまでつきまといます。

大切な点は、50名の計算は、過去1カ月以内に行われた同種の有価証券の売付けの相手方の数を合算するということです。1名に売り付けたとしても、過去1カ月間に同種の有価証券を49名に売り付けていたら、1カ月通算で50名になってしまいますから、少人数私売出しを利用できません。ですから、実務的には、金融商品取引業者等が同種の有価証券を売り付けた投資家の数を1カ月間、管理しなければなりません。管理を怠って、過去1カ月の投資家の数を通算すると50名以上になってしまった場合には、有価証券届出書の提出されていない有価証券の売出しを行ったことになりますので、刑事罰の対象です。

② プロ私売出し
プロ私売出しは、多数でも適格機関投資家という特定の投資家にのみ行う売付けのことです。適格機関投資家以外の投資家に譲渡されることがないように、プロ私売出しの対象となる有価証券には「譲渡制限」が償還まで付いて回ります。

③ 特定投資家私売出し
特定投資家私売出しは、ある程度多数でも特定投資家という特定の投資家にのみ行う売付けのことです。特定投資家以外の投資家に譲渡されることがないように、特定投資家私売出しの対象となる有価証券を金融商品取引業者等が売り付ける際には、投資家と譲渡制限に関する契約を締結する義務があります。

特定投資家私売出しは、平成21年改正で追加される制度ではなく、既に金融商品取引法に規定されている制度です。ただ、特定投資家私売出しは、発行者がインターネットなど企業情報と証券情報を公開し、企業情報については事業年度ごとに更新していかなければならないため、現実に利用されている件数はわずかです。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

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プロフィール

川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。JSL行政書士事務所代表。

JSL行政書士事務所は、200社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

メールマガジン:、読者数国内最多の金融商品取引法専門メールマガジンを金融商品取引業者と金融当局に配信中

JSL行政書士事務所代表
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-3-2 郵船ビルディング1階
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