外国証券の取り扱い(4)


4月1日施行の「売出しの定義の改正」と「私売出し」の最新情報については、こちら<平成21年改正法>をクリックしてをご覧ください。



外国証券の売出しには、①-1.有価証券届出書の提出が必要な売出しと、①-2.有価証券届出書の提出が不要な売出しの2つに分かれます。①-1.は、国内証券とまったく同様の取扱いですから、平成21年改正金融商品取引法とは関係ありません。①-2.の開示手続き不要の外国証券の売出しが、改正法で追加されたものです。

①-2.には、外国政府や外国企業の財政・経理情報がインターネットなどで外国法令に基づいて公表されていて、外国で継続的に売買が行われていて、国内での取引価格情報が容易に取得できる外国証券が該当します。ただし、①-2.の外国証券は、有価証券届出書を提出するという法定開示手続きが必要ないというだけで情報提供が不要というわけではありません。金融商品取引業者等が投資家に売付ける際に、投資家に何の情報提供も必要ないとすれば、投資家はわざわざ自分の責任で外国証券の情報を入手しなければならなくなってしまいます。

<情報提供が必要な外国証券>
開示不要の外国証券であっても、金融商品取引業者等は、投資家に投資判断に必要な情報を提供するのが原則です。ここで必要な情報とは、有価証券届出書にある情報と大きなくくりは同じです。

有価証券届出書は、企業情報と呼ばれる有価証券を発行する企業などに関する情報と、証券情報と呼ばれる販売される有価証券そのものの情報が記載される法定開示書類で、発行者が作成し、財務局長に提出するものです。一方、開示不要の外国証券を販売しようとする金融商品取引業者等は、外国証券の発行者情報と証券情報(合わせて「外国証券情報」といいます)を投資家に提供する義務を負います。作成者は、金融商品取引業者等です。現行の「外国証券内容説明書」に該当します。

<私見>
金融商品取引業者等が投資家に提供する情報として、契約締結前交付書面があります。外国証券情報は、これとは別のものです。契約締結前交付書面には発行者の経理情報や有価証券の発行額などの証券情報は記載されていませんから、外国証券情報は契約締結前交付書面の記載事項とはまったくの別物です。

この状態は、2つの面で問題があります。一つは、金融商品取引業者等の負担が大きすぎるという問題です。売出しで販売される有価証券の発行者情報や証券情報は、発行者が作成します。当たり前の話で、発行する者自身が、発行者情報をもっともよく知っているからです。発行者の肩代わりを金融商品取引業者等に求めるのは、金融商品取引業者等に対する負担が大きすぎます。発行者のデフォルト情報についても金融商品取引業者等は提供する義務があるのですが、これは現実的にはムリでしょう。

もう一つは、投資家が受領する情報が多すぎるという問題です。金融商品取引法を知っている投資家であれば別でしょうけれども、通常、投資家は金融商品取引法を知りませんから、どうして複数の情報を同時に提供されるのか理由がわからないでしょう。投資家からすると、面倒なだけです。投資家は、外国証券の情報は必要でしょう。でも、法令で画一的に定められた情報がすべて必要な投資家は、実際にはいないでしょう。

現行の外国証券内容説明書の交付は、外国証券が50名未満の限られた範囲にのみ販売され、なおかつ、転売制限がついていない外国証券の販売に限定されていました。改正法の外国証券内容説明書の場合、50名以上の投資家に提供され、かつ、転売制限の制度がありません。投資家の情報過多を懸念します。「過ぎたるは及ばざるが如し」です。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

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川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。JSL行政書士事務所代表。

JSL行政書士事務所は、200社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

メールマガジン:、読者数国内最多の金融商品取引法専門メールマガジンを金融商品取引業者と金融当局に配信中

JSL行政書士事務所代表
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-3-2 郵船ビルディング1階
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