インサイダー取引規制(1)


久しぶりに、インサイダー取引に関する特集をお送りします。平成25年金融商品取引法の改正を受けた改正インサイダー取引規制の施行日が4月1日と迫っていることが原因です。

改正インサイダー取引規制を理解するためには、証券取引法時代からのインサイダー取引の考え方をしっかり、理解していなければ、正しい理解はできません。

今日からシリーズでお届けする、「インサイダー取引」のシリーズでは、できるだけ従来のインサイダー取引規制を理解することを出発点として、改正点を解説していきたいと考えます。

インサイダー取引規制には、文字通りインサイダー取引を規制する条文と、インサイダー取引を未然に防止するための条文とに分かれます。ものの本では、この二つの規制(条文)を同列に語るので、読者はインサイダー取引規制とは混乱させる複雑極まりない規制であると勘違いしてしまうのです。

この意味で、多くの学者や弁護士が出版している本を参考にしてインサイダー取引規制を理解することは、非常に危険です。むしろ、学者や弁護士が書いているほとんどのインサイダー取引規制に係る章は、百害あって一利なし、という場合があることを理解したうえで、読み進めることをお勧めします。

条文の順番から言って、まずは、インサイダー取引未然防止規制から解説します。

<短期売買利益の返還請求>
従来から、上場会社等の役員が自己の名義で(自分の財布で)、上場会社等が発行する上場株券等の売買をしてから6か月以内に反対売買をしたときには、上場会社等は役員に利益を会社に返還せよ!と請求することができます。インサイダー取引の未然防止などが目的です。

<売買報告書の提出>
従来から、上場会社等の役員が自己の名義で、上場会社等が発行する上場株券等の売買をしたときには、売買をした日の属する月の翌月15日までに、売買報告書を財務局に提出する義務があります。前述の規定に基づく、上場会社等が「利益を返還せよ!」と要求することを容易にすることが目的です。

<売買禁止規定>
従来から、上場会社等の役員が、自己のポジションをヘッジするために上場株券等を空売りする際、空売りの量がオーバーヘッジになるような空売りをすることが禁止されています。

<改正法>
平成25年改正金融商品取引法「は、これらの規定に少し工夫を凝らしただけの規制です。

つまり、上場会社に上場投資法人を、役員に資産運用会社の役員を、上場株券等に上場投資証券を追加したのが、今回のインサイダー取引未然防止規制の改正の一部の要点です。

従って、売買報告書の提出の例で言えば、改正法施行前から上場されている投資証券であっても、自社がAMを務める上場投資証券を取得した役員は、財務局に売買報告書を提出しなければならないということです。

<注意点>
以上の規制は、上場会社等あるいはAM等の役員のインサイダー取引の未然防止のために設けられた規制であって、インサイダー取引規制ではありません。学者や弁護士が書いているものの本には、未然防止規定とインサイダー取引禁止規定とを同列に説明するものがありますが、これは大きな間違いです。

事実、以上のインサイダー取引の未然防止規制とインサイダー取引規制の対象者の範囲は、全く異なることに注意が必要です。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

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プロフィール

川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。現在、JSL行政書士事務所代表。コンプライアンス・リスク管理コンサルタントとして、上場会社、が外資系企業など多数の金融商品取引業者の顧問に就任。

JSL行政書士事務所は、100社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

メールマガジン:、読者数国内最多の金融商品取引法専門メールマガジンを金融商品取引業者と金融当局に配信中

JSL行政書士事務所
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-3-2 郵船ビルディング1階
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