外国証券の取り扱い(5)


4月1日施行の「売出しの定義の改正」と「私売出し」の最新情報については、こちら<平成21年改正法>をクリックしてをご覧ください。



平成21年改正金融商品取引法の施行に伴い導入される外国証券の売出しについて全般をまとめながら、売出しについては最後になる「情報提供が不要な外国証券」についてみていくことにします。

<開示が必要な売出し>
外国で既に発行された外国証券を不特定多数の国内投資家に販売する行為は「売出し」になりますので、原則として、発行者が有価証券届出書を関東財務局長に提出している外国証券でなければ、販売することができません。

<開示が不要な売出し>
ただし、国内における売買価格が容易に取得できて、外国でも継続的に売買されている外国証券で、発行者の財政・経理情報がインターネットなどで公表されているものについては、売出しではあるものの、例外として、金融商品取引業者等が、販売しようとする外国証券に関する外国証券情報を顧客に交付するか、インターネットを利用して配信するかなどすれば、金融商品取引業者等は、有価証券届出書の提出がされていない外国証券でも、国内で売出しを行うことができます。

外国証券情報とは、外国社債を例にとると以下の通りです。

発行者情報
① 発行者の名称
② 発行者の本店所在地
③ 発行者設立の準拠法、法的地位及び設立日
④ 決算期
⑤ 事業の内容
⑥ 経理の概要
⑦ 外国為替の推移及び最近日の為替相場

証券情報
① 社債の種類及び名称
② 発行地及び上場・非上場の区分(上場している場合は上場している取引所)
③ 発行日
④ 発行額
⑤ 利率及び利払金の決定方法
⑥ 利払日
⑦ 償還期限
⑧ 他の債務との弁済順位の関係
⑨ 課税上の取扱い
⑩ 発行、支払及び償還に係る準拠法並びに管轄裁判所, etc.


<情報提供不要の売出し>
開示が不要な売出しの中には、さらに例外として、外国証券情報の提供も不要な外国証券があります。いくつかありますが、実務的に大きいのは、外国国債と外国地方債の売出しです。外国国債と外国地方債の売出しは、外国証券情報の内容が発行国の法令に基づき公表されていて、かつ、2以上の金融商品取引業者等が継続的に売買している場合には、金融商品取引業者等による外国証券情報の公表がされていない場合であっても、金融商品取引業者等は不特定多数に販売することができます。

<具体的事例>
米国国債は、国内の売買価格情報の取得が容易で、発行者である米国政府の情報も公開されていて、外国でも継続的に売買されているので、米国政府が有価証券届出書を提出していなくても、金融商品取引業者等は不特定多数の国内投資家に売出し形式で販売することができます。さらに、米国国債は、2以上の金融商品取引業者等が売買しているし、外国証券情報をインターネットで公表しているでしょうから、金融商品取引業者等による外国証券情報の提供がなくても、売出しが可能です。

一方、ファニーメイが発行するいわゆるエージェンシー債は、国内の売買価格の取得が容易で、発行者の情報公開もされていて、外国で継続的に売買されているので、開示不要の売出しの対象になりますが、外国国債でも外国地方債でもないため、金融商品取引業者等による外国証券情報の提供は必要です。IBMなどの外国の大企業が発行する社債や株券も同様です。

<私売出し>
以上が、外国証券の売出しです。私売出しにつきましては、既にこのシリーズで話していますので、詳細は省きますが、外国証券を国内で不特定多数に販売しない場合、つまり、不特定でも少数の投資家にしか販売しない場合(少人数私売出し)、多数でも特定の投資家にしか販売しない場合(プロ私売出し、特定投資家私売出し)は、売出しにはなりませんので、そもそも開示規制は適用されず、代わって、譲渡制限があることを書面で顧客に告知すれば、金融商品取引業者等は販売することができます。

<おまけ>
私売出しで販売できない外国証券がいくつかあります。実務的に影響が大きいのは、他社株転換社債です。金融商品取引業者等は、上場株券を対象とした他社株転換社債を販売するには、募集か売出しの方法、つまり、開示が行われた方法でなければ販売することができません。これは、現行規定よりも厳しい内容に改正されることになりますので、今日現在公表されている政令・内閣府令案は、修正されるかもしれません。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

コメント

非公開コメント

プロフィール

川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。JSL行政書士事務所代表。

JSL行政書士事務所は、200社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

メールマガジン:、読者数国内最多の金融商品取引法専門メールマガジンを金融商品取引業者と金融当局に配信中

JSL行政書士事務所代表
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-3-2 郵船ビルディング1階
電話:03-5533-8785
http://office-jsl.com/

<お問い合わせ>
お問い合わせは、お問い合わせフォームで受け付けます。

<主な業務>
主な業務は、主な業務をご覧ください。

ブログの内容は個人的見解ですので、正確性は保証いたしません。また、ブログの内容に関する質問を含め、質問には一切回答いたしかねますので、ご了承ください。

プライバシーポリシー

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
Translation
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード