信託受益権の基礎知識


宅建業者に対する財務局検査が活発に行われいます。検査準備のためあるいは検査の事後対応のために、私に連絡をしてくださる宅建業者の方が増えてきましたが、お話をお伺いしていると、「不動産信託受益権」の取引の基礎知識が十分ではない宅建業者の方が多いようです。

あらため、不動産信託受益権の取引の基礎知識をまとめておきます。

<不動産信託受益権の私募の取扱い>
宅建業者の方にとって、「不動産信託受益権の私募の取扱い」という概念を理解するのは、相当困難です。なぜなら、「私募の取扱い」という言葉は、日常会話的ではなく、金融商品取引法特有の言葉だからです。

ただ、「私募の取扱い」を理解できさせすれば、宅建業者の方の収益機会は大幅にアップするでしょうから、ここで覚えてしまいましょう。

不動産信託受益権は、主に収益物件(商業施設、テナントビル、賃貸マンションなど)の所有者が、収益物件を信託銀行に「信託」(譲渡)することから始まります。譲渡すると、代わりに、所有者は「不動産信託受益権」と呼ばれる「権利」を取得します。

この権利は何かというと、大ざっぱに言ってしまいますと、収益物件から上がる収益(賃料)から信託銀行の報酬を引いた金額を受け取ることができる権利のことです。所有者が信託銀行に「利益をよこせ!」と請求することができる権利が不動産信託受益権の正体だと思って頂いて、当面、差し支えありません。

ここまで、大丈夫でしょうか。

次も大ざっぱですが、この不動産信託受益権を誰かに売却する行為が、「不動産信託受益権の私募」です。(まだ、「私募の取扱い」ではないことに注意!)

「不動産信託受益権の私募の取扱い」とは、この「誰か」(買主ですね)を探してくる行為のことを言います。

<不動産信託受益権の売買の媒介>
「それって、媒介じゃないの?」と思うのは、宅建業者の方にとっては自然な発想です。でも、ざっくり言いますが、金融商品取引法は、収益物件の当初の所有者が、不動産信託受益権を買主に売却する行為を「私募」、その買主を探してきた宅建業者の行為を「私募の取扱い」と言います。

「じゃあ、売買の媒介って何だよ」ということになりますが、この「買主」が不動産信託受益権を転売する行為が「不動産信託受益権の売買」と呼ばれ、転売の際の「買主」を探してくる宅建業者の行為を「売買の媒介」と呼ぶのです。

つまり、これも大ざっぱですが、収益物件の当初の所有者以外の人が、不動産信託受益権を転売する行為が「不動産信託受益権の売買」であり、転売の媒介をする行為が、「不動産信託受益権の売買の媒介」です。

以上が、不動産信託受益権の取引の基礎知識です。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

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川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。JSL行政書士事務所代表。

JSL行政書士事務所は、200社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

メールマガジン:、読者数国内最多の金融商品取引法専門メールマガジンを金融商品取引業者と金融当局に配信中

JSL行政書士事務所代表
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-3-2 郵船ビルディング1階
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