発行登録制度の改正(2)


4月1日施行の「売出しの定義の改正」と「私売出し」の最新情報については、こちら<平成21年改正法>をクリックしてをご覧ください。



発行登録制度は、企業が、機動的に株券や社債を発行して資金調達をすることを可能にするために存在する制度です。株券や社債を発行する度ごとに、有価証券届出書を提出して、原則として15日間待ってから初めて決済できるのでは、時間とお金がかかります。有価証券届出書の制度よりも、企業が、機動的かつ効率的に資金調達を可能にする制度が発行登録制度です。発行登録制度を利用する企業は、発行登録さえしておけば、発行登録追補書類を提出するだけで、決済し、資金調達をすることができるからです。

<プログラム・アマウント方式の採用>
現在の発行登録制度は、発行登録制度を利用するときに提出する発行登録書類に記載した発行予定総額を超えた金額を発行することはできません。発行登録が有効な期間は、1年間又は2年間ですが、この期間に100億円発行するとします。すると、100億円しか発行できないわけですから、100億円発行したところ、50億円が償還されたとしても、もう発行できません。発行する金額が問題であって、発行されて流通している金額が問題であるわけではないからです。

この方式だと、2年間に100億円を調達したかった企業が、50億円が償還されて2年が過ぎると、結局、50億円しか調達していないことになってしまい、発行登録書類を提出した当初予定した金額を調達できていないことになってしまいます。本当に100億円調達するには、再び、発行登録を書類を提出するか、有価証券届出書の開示方式に戻るか、いずれかの選択をしなければならなくなってしまいます。

この点は、理論的におかしいことと、発行企業の実務上の負担が大きいことから、平成21年改正金融商品取引法は、発行額は、発行する金額を問題とするのではなく、発行されて流通している金額を問題にするという方向に転換しました。この結果、発行登録書類には、現行の通り、発行予定金額を記載してもいいし、「発行残高の上限」を記載しても良いことに改正されました。

<SPCによる発行登録制度の利用>
現行、発行登録制度を利用できる発行者は、実態のある者に限定さています。言い換えると、SPCは、発行登録制度を利用することはできません。平成21年改正金融商品取引法は、①資産流動化法に基づき発行される特定社債券と優先出資証券、②外国で発行される有価証券のうち①の性質を有する有価証券であっても、発行者は発行登録制度を利用できるようにしました。

当初の原案を聞いたときには、国内SPCに限定されるという話でしたが、②を追加したことは、資金調達の方法の多様化の結果、国内企業が、国内外のSPCを通して資金調達するケースが多いことに対応した適切な措置だと考えます。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

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川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。現在、JSL行政書士事務所代表。コンプライアンス・リスク管理コンサルタントとして、上場会社、が外資系企業など多数の金融商品取引業者の顧問に就任。

JSL行政書士事務所は、100社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

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