金商法の用語の整理3


金商法に深く携わっている人にとっても、「有価証券の引受け」はとてもわかりにくい概念です。

有価証券の引受けには、実務上、大きく分けると「買取引受け」と「残額引受け」の2種類があります。

でも、同じ引受けと言っても、この2つはまったく異なる行為なので、ここで最初につまずく方が散見されます。

<買取引受け>
まず、金商業となる有価証券の引受けは、基本的に、発行者が有価証券(第二項有価証券を含みます)の募集や私募を行うとき、又は、有価証券の所有者が売出しを行う際に行われる引受けに限られます。

買取引受けとは、発行者が有価証券の募集か私募を行う際、あるいは所有者が売出しを行う際に、投資家に有価証券を取得させるために、発行者又は所有者からいったん有価証券を取得する行為のことです。

発行者や所有者(売出し人といいます)からすれば、有価証券を投資家に直接取得させる方より、金商業者にいったん取得してもらった方が安心です。まず確実に期日通りにお金が入ってくるからです。

この発行者や売出人の希望を叶えるために、金商業者は投資家に取得させるために、いったん取得するわけですが、金商業者によるこのような取得行為が買取引受けです。

<第二項有価証券の引受け>
信託受益権や組合出資持分といった第二項有価証券でも買取引受けがありますが、第二項有価証券を取り扱う行為、例えば、信託受益権の私募の取扱いやファンドの私募の取扱いは二種業務です。

これに対し、有価証券の引受けは原則として一種業務と決まっています。

この関係を混乱される方も散見されます。

第二項有価証券を投資家に取得させる行為は二種業務なんだけれども、取得させるために取得する行為は一種業務。

ということは、第二項有価証券の買取引受けができるのは、どんな金商業者でしょうか。

そうです。第二項有価証券を取得させるために取得する買取引受けができる者は、原則として、一種業者と二種業者を兼業している金商業者に限られることになります。

ここまで、大丈夫でしょうか。

<残額引受け>
有価証券の引受けには、もう一つ「残額引受け」という行為があります。

発行者や売出人は資金調達のために有価証券を発行したり販売したりします。資金計画もあるでしょうから、「売れ残り」が発生するのはちょっと困るでしょう。

このようなときに活用される金商業者の行為が「残額引受け」です。

残額引受けは、金商業者が発行者や売出人との間で「もし売れ残りが出たら、売れ残り(残額)は自ら取得しますよ」という内容の契約をあらかじめ締結しておく行為のことです。

ここ、いいですか。

買取引受けは金商業者が有価証券を「取得する行為」が引受けであるのに対し、残額引受けは金商業者が有価証券を取得したかどうかはどうでもよく、売れ残りを取得するという「契約を締結する行為」が引受けです。

全然別の行為ですよね。

ですから、例えば、A社が社債を発行しようとするとき、A社社長に「売れ残りが出たら頼む!」と言われたA社社長の友人であるB社社長が、「売れ残ったら当社が買い取るから心配するな」(残部が生じた場合残部を取得する)と約束したら、B社の行為は、たとえ社債を取得しなくても残額引受けとなり、B社が証券会社でない場合は無登録営業になり得ます。

また、この場合、B社が証券会社であったとしても、引受けの登録を受けていない場合、B社の行為は無登録営業です。

混乱が多いところなので、注意しておきましょう。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

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プロフィール

川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。現在、JSL行政書士事務所代表。多数の金融商品取引業者の顧問に就任。

JSL行政書士事務所は、100社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

メールマガジン:、読者数国内最多の金融商品取引法専門メールマガジンを金融商品取引業者と金融当局に配信中

JSL行政書士事務所代表
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-3-2 郵船ビルディング1階
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