弊害防止措置1


今日から、助言業者と運用業者の「弊害防止措置」についてみていきましょう。

ここ、ちょっと難しいので、わからないときは何度も読み直してみてくださいね。

弊害防止措置とは弊害を防止する措置のことですが、金商法で「弊害」というと、「利益相反」(りえきそうはん)のことです。利益相反とは、相対立する利益の衝突のことをいいます。

典型的な利益相反は、有価証券の売買の当事者です。売りたい方は「高く売りたい」、買いたい方は「安く買いたい」というように利益が相対立していますよね。この状態が、利益相反、金商法でいう「弊害」です。

<弊害が生ずる相手方>
弊害は、典型的には、次の3つの相手方相互間に生じます。

1 同一の金商業者が2以上の種別の業務を行う際の、各々の業務の種別の顧客間

2 金商業者の親子法人と顧客間

3 金商業者の顧客間

1の「業務の種別」とは、第一種金融商品取引業、第二種金融商品取引業、投資助言業務、投資運用業の種別のことです。同一の金商業者が2以上の種別の業務を行うとき(登録を受けているとき)に、各々の業務の種別の顧客間に生じる利益相反が1でいう弊害です。

<助言・運用と一種・二種>
助言を受けた顧客が行う有価証券の売買等に関する情報や運用業者の運用として行う有価証券の売買等に関する情報を利用して、一種又は二種の顧客に有価証券の売買等の委託の勧誘をする行為が、1の弊害の実例です。

ここで「委託」とは一種又は二種の顧客の取引のことで、有価証券の売買の媒介、取次ぎ又は代理の申込みのことをいいます。

助言業者や運用業者は、助言又は運用に関する情報を利用して、同時に営む一種業者又は二種業者としての顧客に有価証券の売買の媒介、取次ぎ又は代理の申込みの勧誘をしてはならないと規定されています。

弊害が生ずるからですが、誰と誰の弊害でしょうか。

そうです。助言の顧客や運用の権利者(運用の場合、顧客のことを権利者といいます)と、一種や二種の顧客との間に弊害(利益相反)が生じます。

具体的に見ていきましょう。

<情報利用の委託の勧誘の結果>
権利者のための運用として上場株券(株式)の売買を行っている運用業者が、運用の一環として、大量の株券を買い付けようとするとします。大量に買い付けるわけですから、株価は一般に上昇します。

この情報を利用して、一種業者としての顧客に株券の売買に関する委託の勧誘をするわけです。「株券を買い付ける委託の申込みを当社にしてください。必ず、儲けさせますよ」というようにです。

実際、一種業者としての顧客が株券を買い付けてから運用業者として株券を大量に買い付けると、一種業者としての顧客が買付け、株価が上昇したところ、同一の金商業者が、さらに運用業者としてさらに買い上げるのですから、一種業者の顧客は利益を得る一方、運用業者の顧客は、一種業者の顧客が買い付けなければもっと安い価格で買い付けることができたにもかかわらず、高値で買い付けることになります。

高く売りたいという一種業者の顧客は満足しますが、安く買いたいという運用業者の権利者の利益が阻害されます。

一種業者の顧客と運用業やの利益が対立し、一種業者の顧客に有利な行動を運用と一種を兼業する金商業者が作り出してしまっています。このような金商業者の行為は、運用業者の権利者と一種業者の顧客の利益の対立を防止していない、だから、弊害防止措置違反であり、違法行為だというわけです。

運用業者の権利者の利益が一種業者の顧客の売買で損なわれた結果になる元凶は、金商業者は、運用に関する情報を利用したからです。運用業者の権利者と一種業者の顧客との弊害が顕在化したものです。

だから、助言業者として行う助言と運用業者として行う有価証券の売買等の情報を利用して、一種業者又は二種業者としての顧客の委託の申込みをしてはならないと、弊害防止措置として禁止されているのです。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

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川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。JSL行政書士事務所代表。

JSL行政書士事務所は、200社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

メールマガジン:、読者数国内最多の金融商品取引法専門メールマガジンを金融商品取引業者と金融当局に配信中

JSL行政書士事務所代表
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-3-2 郵船ビルディング1階
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