弊害防止措置3


助言に基づいて顧客が行った有価証券の売買等又は運用として運用財産の運用として行った有価証券の売買等を結了させ、又は反対売買を行わせるため、助言の顧客または運用の権利者以外の顧客に有価証券の売買等の勧誘をすることが禁止されています。

助言・運用の顧客(権利者)と一種・二種の顧客との間に利益相反が生ずるからです。

<一般的な解釈>
この規定は、一般論として、例えば、助言業者が行った助言に基づき、助言の顧客が取引を実行しようとするとき、一種業者又は二種業者としての顧客を探す行為を禁止する趣旨であると解説されています。

助言・運用の顧客(権利者)のためにする取引であることを知らずに取引に入った一種や二種の顧客の利益を害する恐れがあるからだと説明されます。

だから、条文で、「助言又は運用の顧客(権利者)の取引の一環であることを、一種・二種の顧客に説明すれば良い」と規定されていると考えられているようです。

これは違います。

<趣旨>
この弊害防止措置は、単に、一種・二種としての顧客に「助言・運用の顧客(権利者)のために行っているから注意して」と説明することを求める規定ではありません。

例えば、助言業者としてSPCに不動産信託受益権の取得をさせるために、二種業者として発行者(売付人)を探すという日常茶飯事の行為が、(顧客説明がなければ)法令違反になってしまうので、不都合であるというパブリックコメントも出ていました。

でも、違うんです。

<解釈>
この規定をよく見ると、有価証券の売買その他の取引を結了させるため、あるいは、反対売買を行わせるために、適用範囲が限定されています。

つまり、この規定は、助言業者としての顧客が助言をして、顧客に新たに有価証券の売買等をさせる場合を想定しているのではなく、既にポジションを抱えている顧客がポジションを解消する際に行わせる有価証券の売買等の勧誘を禁止する趣旨です。

ですから、この規定は、既に顧客(権利者)が有するポジションとは関係のない新規取引には適用の余地がありません。

<理由>
なぜ、このような規定を設けたかというと、ポジションを解消する行為は、顧客から高く売りたいという圧力が二種業者を兼任する助言業者に係るため、「圧力がかかっています」ということを一種業者又は二種業者としての顧客に伝えなければ、一種業者や二種業者としての顧客は、通常の取引と誤解してしまい、投資判断を誤るからだと考えられます。

<結論>
既にポジションを持っている助言業者の顧客や運用業者は、顧客や運用財産のポジションを解消するために、一種業者又は二種業者の顧客に反対売買をしてもいいんだけれでも、「売り圧力(高値で売却せよという圧力)あるいは買い圧力(安値で買付けよという圧力)が顧客(権利者)からかかっている」旨を告げるべきだと考えます。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

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川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。JSL行政書士事務所代表。

JSL行政書士事務所は、200社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

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