弊害防止措置5


投資助言業務又は投資運用業に関して、非公開情報に基づき、助言業者の顧客や運用の権利者(顧客)の利益を図ることを目的とした助言若しくは運用を行うことは禁止されています。

<禁止の理由>
非公開情報とは、一種業者又は二種業としての行為を通じていた発行者や顧客に関する情報のことです。一種業者や二種業者には、誠実義務があります。発行者や顧客の情報を理由もなく事業活動で利用することは、誠実義務違反になります。

このような行為は、金商業者が兼業業者であることから生じる弊害であるため、弊害防止措置に規定されています。

<利用する意思>
兼業業者は、一種業者又は二種業者を通じて得た発行者や顧客の情報を「利用して」、助言業者や運用業者の顧客や権利者の利益を図ることが禁止されているのでしょうか。

条文に規定されている通り、兼業業者に利用する意思がなくても、非公開情報に「基づき」、助言業者や運用業者の顧客又は権利者の利益を図ることが禁止されているのであって、「利用して」行わることは、この禁止規定に違反する要素とはなっていません。

非公開情報に「基づいて」助言業者や運用業者の顧客や権利者の利益を図る助言や運用をすることが禁止されているのであって、兼業業者に利用する意思があったかどうかは、この禁止規定違反であるかどうかの判断に影響はありません。

<具体例>
例えば、委託者に指図権限があり、委託者兼当初受益者である場合、委託者が不動産信託受益権を譲渡する行為は有価証券の発行になり、発行者は委託者です。この発行者のために8発行者に代わって)投資家に取得加入を行う行為は私募(又は募集)の取扱いになりますが、募集の取扱いに関する発行者の情報に基づき助言業者や運用業者の顧客や権利者の利益を図ってはいけないというのが、この禁止規定です。

これを認めてしまうと、発行者に不動産信託受益権の発行をさせる際、高値で発行したい発行者の意に反して、安値で取得したい助言業者や運用業者の顧客や権利者の利益を図るために、兼業業者が、発行価格を不当な安値にすることを発行者に提案するおそれがあります。

このとき、発行者の利益(高値で発行したい)と、助言業者や運用業者の顧客の利益とは衝突します。このような行為は、発行者に対する誠実義務違反であると同時に、発行者と助言業者や運用業者の顧客や権利者の利益相反を兼業業者は助長する結果になります。

<発行者の承諾>
ただし、発行者や一種業者又は二種業者の顧客から同意を得ている場合は、この禁止規定は適用されません。このような場合は、発行者は不当な安値に発行価格が決定されるおそれがあることを予想できることからです。

<具体的な対応策>
ですから、兼業業者は、発行者や顧客から、「同意書」を受領することが求められると考えます。法令上は、「承諾得る」のであれば、口頭でも良いわけですが、承諾を得たことを証明するために、実務として、同意書という書面を受領していることが望ましいと考えられます。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

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川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。JSL行政書士事務所代表。

JSL行政書士事務所は、200社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

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JSL行政書士事務所代表
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