信託の受益権(2)


信託に関係する用語は、完璧にマスターしましょう。「委託者」「受託者」「受益者」「信託する(あるいは信託譲渡)」「信託財産」「信託契約」と、この6つの用語が自由自在に使えれば、信託は99%マスターです。

<信託の種類>
信託は、信託財産によって呼び名が変わります。信託財産が金銭のときは「金銭信託」、不動産のときは「不動産信託」、有価証券のときは「有価証券信託」、ローン債権のときは「貸付債権信託」という感じです。ちょっとつかみどころがないかもしれませんが、事業から上がる収益を信託財産とする信託もあり、「事業信託」と呼ばれます。(通常は、英語でWBS:Whole Business Securitizationと呼ばれています)

信託は、受益者が誰であるかによっても、呼び名が変わります。委託者自身が受益者となる信託は「自益信託」、委託者以外の者が受益者となる信託を「他益信託」と呼びます。

また、特に、遺言で行う信託は「遺言信託」と呼ばれます。さらに、委託者自身が受託者(受益者ではありません)となる信託を「自己信託」と呼びます。

他にも、信託財産の運用(管理・処分のこと)の指図をする者によっても呼び名が変わり、委託者や委託者の代理人が運用を事細かに指図をする信託は「特定信託」、委託者は大枠を示すだけで受託者が裁量で運用する信託は「指定信託」と呼ばれます。

信託が難しいと感じる方は、用語の整理ができていない場合がほとんどです。用語さえわかってしまえば、信託は簡単ですから、何度も繰り返し前回と今回の記事を読んで、用語に慣れるようにしてみてください。

<不動産信託>
信託の中で最も多いといわれているのが、不動産信託です。今お話したように、信託財産が不動産の信託のことです。

不動産信託では、不動産を所有している者が委託者となって、主に受託者となる信託銀行に不動産を信託します。このとき、不動産の所有権は委託者から受託者に移転します。と同時に、委託者は不動産信託の受益権=不動産信託受益権を受託者から取得します。これは、「他益信託」でしょうか、それとも「自益信託」でしょうか?そうです、委託者が受益者となる信託ですので「自益信託」ですね。

この場合、委託者は最初の受益者になっていますので、委託者は、「委託者兼当初受益者」と呼ばれます。

不動産信託受益権は、テナントビルや賃貸マンションやショッピングモールなど、信託された不動産の運用によって利益が生じする不動産に利用されます。この利益を受ける権利が「不動産信託受益権」です。ここはちょっと難しいかしれませんが、受益権は、受託者から利益を受ける権利ですから、受益者から見ると受託者に対して「利益を払え」という債権であり、受託者見ると受益者に利益を分配する義務を負っていますので、債務になります。ローンと同じで、払えといえる立場にある委託者が債権者、払う義務を負っている受託者が債務者であるということです。

民法あるように、債権者は債権を他人に譲渡することができます。ただし、譲渡するとき、債権者は、債務者が誰に払えばよいかわかるように、債務者に債権を譲渡したことを通知するか、債務者の承諾が必要です。

不動産信託(に限りませんが)も同じで、受益者は不動産信託受益権を他人に譲渡することができます。このとき、実務的には、受益者は受託者から「譲渡承諾書」と呼ばれる書面を受け取ります。ローン契約で債権者が債務者の承諾をもらうのとまったく同じことです。


<信託を利用するメリット>
不動産を売却したい不動産の所有者は、どうしてわざわざ委託者となって、受託者に不動産を信託し、不動産を受益権に変えてから、受益権を売却するという面倒なことをするのでしょうか。次回は、この点からお話していきます。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

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プロフィール

川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。現在、JSL行政書士事務所代表。コンプライアンス・リスク管理コンサルタントとして、上場会社、が外資系企業など多数の金融商品取引業者の顧問に就任。

JSL行政書士事務所は、100社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

メールマガジン:、読者数国内最多の金融商品取引法専門メールマガジンを金融商品取引業者と金融当局に配信中

JSL行政書士事務所
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