株式会社トラフィックに対する処分勧告


平成26年6月17日、証券取引等監視委員会は、株式会社トラフィックが無登録でファンドの出資持分の私募を行っていたとして、金融庁に対し、同社に行政処分をするように勧告しました。詳細は、こちらをご覧ください。

無登録営業で勧告されたり、あるいは、公表処分を受けたりしている会社は数多ありますが、今回の事例は、私の知る限り、初めての事例です。

<適格機関投資家等特例業務>
匿名組合契約においては、営業者が金銭の出資者と匿名組合契約を締結し、出資された金銭で運用を行う、運用の結果生じた収益を出資者に分配しますが、出資者が営業者に対して有する「収益を分配しろ!」といえる配当請求権は、「組合出資持分」と呼ばれる「第二項有価証券」です。

匿名組合契約の場合、組合出資持分の発行者は営業者になりますが、発行者である営業者が、出資者に組合出資持分の取得の勧誘を行う行為は、「自己募集(自己私募)」と呼ばれる「金融商品取引業」です。

自己募集(自己私募)を行うためには、原則として、「第二種金融商品取引業」に係る登録を受けなければなりません。

例外の一つは、「適格機関投資家等特例業務」の制度です。一定の要件を満たせば、出資者が、適格機関投資家(証券会社、銀行、運用業者、生損保など)1名以上、他の投資家49名以下の場合、発行者である営業者は、登録を受けず、届出を行うだけで、自己私募をすることが認められています。

同社の事例は、「出資者の中に適格機関投資家がいなかった」(だから、二種登録が必要だった)という理由で、無登録営業にあたると指摘された事例です。

<投資事業有限責任組合>
ファンドと一般的に呼ばれる組合形態の中に、「投資事業有限責任組合」があります。同組合は、適格機関投資家です。

<同社の事例>
適格機関投資家等特例業務の届出を行った者を「特例業務届出者」といいますが、同社は、特例業務届出者であり、しかも、適格機関投資家である投資事業有限責任組合が出資者に入っています。従って、「出資者に適格機関投資家がいなかった」という指摘は、的外れのように見えます。

証券取引等監視委員会が指摘したのは、「適格機関投資家として出資していた投資事業有限責任組合の業務執行は、同社が行っていた。このため、同社は、ファンドの営業者であると同時に、投資事業有限責任組合の業務執行者でもある。だから、適格機関投資家はいなかった」というものです。

<検査は実質論>
つまり、証券取引等監視委員会は、「同社は、自分で自分に投資していただけじゃないか」というわけです。

証券取引等監視委員会の公表を読む限り、確かに、同社は、「見た目」だけは、適格機関投資家等特例業務の要件を満たしていました。でも、それは、見た目だけで、「実質的には、自分で自分に出資していただけじゃないか!」という指摘は、証券取引等監視委員会が、形式論ではなく、実質論で攻めたということです。

検査は、実質論です。形式要件を満たしていても、実質がダメならダメです。これは、正しい検査手法です。形(見た目)が良くても、中身がダメならダメでしょ、というアプローチがないと、脱法行為や法の潜脱行為を許してしまうからです。

私は、機会があるたびごとに「検査は、形式ではなく、実質を見る!」と言っていますが、今回のケースが典型的な事例の一つです。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

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川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。JSL行政書士事務所代表。

JSL行政書士事務所は、200社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

メールマガジン:、読者数国内最多の金融商品取引法専門メールマガジンを金融商品取引業者と金融当局に配信中

JSL行政書士事務所代表
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-3-2 郵船ビルディング1階
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