内部管理態勢3


私は、金商業者の方から、内部管理態勢の検証を依頼されることが多いですが、検証の中で、最初に行うのが、業務方法書の検証です。

業務方法書は金商業者にとって憲法だからです。

憲法を知らないのでは、内部管理態勢の検証ができません。

<財務局公表の業務方法書>
関東財務局は、業務方法書のサンプルをサイトに掲載しています。各社各様であるべき業務方法書のサンプルを何のために掲載しているのか理由がまったくわかりませんが、公表しています。

ただし、関東財務局はきちんと「断り書き」をしています。業務方法書のサンプルの前に、こう書いています。

「あくまでも例示ですので同様に記載しないこと。自社の実態と相違するなど、虚偽記載の場合は、行政処分の対象となります。」

初めに「同様に記載しないこと」と言っています。同様に記載してはいけないと言っているのです。繰り返しになりますが、業務方法書は各社各様であるべきだからです。

また、実態を反映していないと「行政処分の対象になります」と言い切っています。

関東財務局は、また、サンプルの最後にも、次のように記載しています。

「虚偽の記載が判明した場合は、行政処分が科されます。」

サンプル通りに記載して会社の実態と合っていない場合は、行政処分が科されますと言い切っています。

<業務方法書の検証>
行政書士に作らせたり、財務局が公表しているサンプルをそのまま使用したりすると、危険な業務方法書になると前回書きましたが、どこが危険なのか、また、内部管理態勢とどのような関係があるのかについて、財務局が公表しているサンプルをベースに、具体的に見ていきましょう。

<第6条第2項第4号>
「当部門には、金融商品取引業務及び関連業務に関する知識及び経験を有する者を配置する。」

「当部門」とは、サンプルの場合、「本店営業部」を指していますが、各社の実情に合わせて、「営業統括部」でも、「営業部」でも構いません。

サンプルによると、当部門には金商業に関する知識と経験を有する者が配置されていることになります。

内部管理態勢の一側面は、管理部門による営業部門の管理態勢であると書きましたが、営業部門に金商業に通じている人を置くから、管理部門はこの人を通じて、営業部門の管理ができるという意味です。

ここで冷静に考えてみましょう。

業務方法書は、金商法に基づき、金商業の登録前に作成され、財務局に提出される書類です。登録されないうちに、金商業を行うと刑事罰が科されます。

サンプル通りに業務方法書を記載すると、これから初めて金商業を行おうとする会社の営業部門に金商業に通じた人がいることになります。

他の金商業者からの転職者をあてるのであれば別ですが、自社の役職員だけで金商業を立ち上げようとする会社に、金商業に通じた営業担当者が存在するのはおかしなことです。

話は少し脇道にそれますが、「人的構成に係る書面」において、「営業部門の統括者は金商業に通じているんだ!」と訴えているものが散見されますが、実際に本人にヒアリングしてみると「金商業は初めてです」と回答する人がいます。

サンプル通りに記載すると、確かに、内部管理態勢としては理想的ですが、金商業者からの転職者がいる場合を除き、サンプル通りにはいかないはずです。

サンプル通りにいかない場合は、営業部門に金商業に通じている人が配置されている場合と同等の管理態勢を別途整備する必要があるのです。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

コメント

非公開コメント

プロフィール

川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。JSL行政書士事務所代表。

JSL行政書士事務所は、200社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

メールマガジン:、読者数国内最多の金融商品取引法専門メールマガジンを金融商品取引業者と金融当局に配信中

JSL行政書士事務所代表
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-3-2 郵船ビルディング1階
電話:03-5533-8785
http://office-jsl.com/

<お問い合わせ>
お問い合わせは、お問い合わせフォームで受け付けます。

<主な業務>
主な業務は、主な業務をご覧ください。

ブログの内容は個人的見解ですので、正確性は保証いたしません。また、ブログの内容に関する質問を含め、質問には一切回答いたしかねますので、ご了承ください。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
Translation
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード