内部管理態勢4


財務局が公表している業務方法書のサンプルのコンプライアンス担当部門(法令等遵守部門)に関する記述も慎重に行われなければなりません。

<第6条4項2号>
「法令等遵守部門は、本店総務部とし、営業担当部門から独立した体制を維持するものとする。」

サンプルでは、本店総務部ですが、コンプライアンス部でも法務部でも構いません。

サンプルでは、コンプライアンス担当部門は、営業担当部門から独立していることになっています。

確かに、コンプライアンス担当者は、営業担当者を兼任してはダメです。

ただ、業務方法書のサンプルが言っているのは、コンプライアンス担当者が営業担当者を兼任してはダメだ、ではなく、コンプライアンス担当部門は、営業部門から独立した体制を維持するということです。

問題は、「営業担当部門から独立した」の意味です。

営業担当部門の業務の流れを考えてみましょう。

まず、顧客に配布する営業資料を作成し、顧客にコンタクトして商品の説明を行い、商品を購入してもらうというのが、大体の流れでしょう。

コンプライアンス担当部門が営業部門から独立している体制とは、コンプライアンス担当部門が、この流れから独立しているという意味です。

実際に問題になったケースは、「営業資料の作成」です。コンプライアンス担当部門は、営業は当然しないけれども、営業資料の作成くらいなら手伝ってもよいかという点です。

<営業資料作成行為の位置付け>
証券会社出身の方であれば、「なんでそんな基本的なことが問題になるわけ?」と思うところですが、証券会社以外の業界では、必ずしも、基本的なことではありません。

結論から、先に話してしまいますと、営業資料の作成は、金商法においては、従前から、「営業行為」です。

だから、営業資料を作成する人は、金商法に規定する「外務員登録」を受けなければなりません。

これは私の解釈ではなく、金商法で外務員登録に関する業務の委託を受けている日本証券業協会の解釈です。

当然といえば当然のことです。

内部管理態勢の整備において、コンプライアンス担当部門が営業部門の作成した営業資料の適切性や適法性を審査する「広告審査」という過程がありますが、営業資料の作成をコンプライアンス担当部門が手伝ってしまっては、審査になりませんよね。

問題になったのは、コンプライアンス部門が、営業資料作成の「補助」をしていたケースです。

<営業資料作成の補助>
業務方法書で「法令等遵守部門は・・・営業担当部門から独立した体制を維持する」と宣言している以上、営業資料作成の補助もできません。

でも、現実問題としては、社員数が少ないため、コンプライアンス部門の担当者が、営業資料の作成の補助をする場合が考えられなくはありません。

このような場合は、コンプライアンス担当部門は、営業資料作成の「補助」はできるものとし、内部管理態勢の実効性を損なわないようにするために、補助の範囲を決めたうえで、実態を業務方法書に記載します。

財務局が公表している業務方法書のサンプルは、大きな会社を想定しているようですから、規模が小さな会社は、サンプル通りには記載しないで、実情に合った記載内容に修正する必要があります。

参考までに、営業資料作成の「補助」とは、営業資料の作成のために必要なデータを集める作業など、客観的にみて、営業行為と認められない範囲の事務のことです。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

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川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。現在、JSL行政書士事務所代表。多数の金融商品取引業者の顧問に就任。

JSL行政書士事務所は、100社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

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JSL行政書士事務所代表
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