内部管理態勢5


財務局が公表している業務方法書のサンプルに内部監査について触れている箇所がありますが、実際に、業務方法書を作成する場合には、内部監査の記述は、相当慎重に行うべきです。

<第6条第5項第2号>
「内部監査部門は、少なくとも1年に1度は内部監査を実施し、健全な内部管理態勢の確保に努めるものとする」

実際にあった事例は、業務方法書に「内部監査部は1年に1回以上内部監査を実施する」と記載されていたにもかかわらず、登録後3年以上たった今も、内部監査が一度も行われていなかったというケースです。

これは、明らかに業務方法書の虚偽記載です。

<内部監査>
私が、内部管理態勢の検証を依頼されるときに最も重点を置く項目の一つは、「内部監査態勢」です。

「内部監査規程は作成されているか」、「内部監査計画は立案され実行されているか」という点から、「内部監査部はそもそもあるのか・・・」という点まで、確認します。

内部監査とは、簡単に表現すると、「自己点検」のことです。外部監査ではなく、自分で自分を点検してみようじゃないか、というのが内部監査です。

ですから、ちなみに、「内部監査部の外部委託」はあり得ません。

内部監査の方法論は様々で、金商業者の規模に応じて、工夫する必要があります。

現実問題としては、この工夫が簡単ではないのですが、いずれにせよ、会社の実態に即した内部監査態勢を整備する必要があります。

<頻度>
問題になるのは、内部監査の頻度です。1年に何回実施するのかという点です。

大手証券会社の人が聞くと「意味がわからん」となるところです。大手証券会社では、内部監査部門は、一年中、途切れなく、内部監査を行っているからです。

大手証券会社の体制は、金商業者全体から見れば例外中の例外で、現実は、内部監査専門部門を作ることだけでも大変で(というかムリで)、内部監査を1年に1回実施できるだけの体制が整備されていれば合格点です。

内部監査は、そうは言っても、自己点検・自主点検ですから、年末の大掃除ではありませんが、1年に1回以上はすべきでしょう。

ただし、二種業者に多く見受けられますが、金商業の全体の業務に占める割合が少なく、数も限られている場合には、会社の実態に即して、内部監査は「随時」実施することにしても、問題はありません。

参考までですが、「随時」にする場合には、「内部監査はどのような手続きを経て、随時行われるか」を明記することが重要です。一般的には、「代表取締役の義務・責任において」随時実施されることになるでしょう。

<実績がゼロの場合>
「金商業の実績がゼロでも内部監査を行う必要があるのか」という質問を受けることがありますが、回答は「ある」です。

まず、本当に実績がゼロなのか、検証する必要があります。金商業と考えていなかったのに、金商業を行っていたという事例があり得るからです。

実際、実績がゼロというのはおかしな話なのです。

登録から3か月が経っても、金商業者としての活動を何もしていない場合、金商法に基づいて、登録を強制的に取り消されることがあります。

何もしない会社を金商業者として登録させておくと、名義貸しの原因となったり、登録しているという勲章(?)のみが営業行為に使用されたりして、投資者保護に反することになりかねないからです。

だから、成約件数はゼロであったとしても、顧客勧誘実績がゼロということはないので、「実績がゼロ」でも、内部監査は実施されなければなりません。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

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川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。JSL行政書士事務所代表。

JSL行政書士事務所は、200社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

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JSL行政書士事務所代表
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-3-2 郵船ビルディング1階
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