法定帳簿1


内部管理態勢の整備の中で重要な地位を占めるモノの一つに「法定帳簿」があります。しばらく、法定帳簿の話が続きますので、タイトルは「法定帳簿」にしましたが、内部管理態勢の続きです。

法定帳簿の意味を一つ一つ理解することは、非常に重要です。

<注文伝票>
注文伝票は、「どのような行為があったときに作成するのか」が重要であり、この点を理解していない金商業者が散見されます。

金商業等府令158条に注文伝票について詳細に書かれています。では、ここをきちんと読めば、注文伝票を正確に理解できるかというと、話は別です。

条文を分析してみましょう。

<注文伝票を作成すべき取引>
まず、注文伝票を作成すべき取引が記載されています。

注文伝票は、金商法2条8項1号から4号に関して作成する義務があることが定められています。具体的には、有価証券の売買、売買の媒介、取次ぎ又は代理、委託の媒介、取次ぎ又は代理及び店頭デリバティブ取引です。

ただし、媒介又は代理を除くとあります。媒介又は代理が除かれる理由は、媒介又は代理に関しては、「媒介又は代理に関する取引記録」という別の法定帳簿を作成することになっているからです。

期間を定めた売出しも除かれています。期間を定めた売出しは金商法2条8項8号に該当し、「売出しに係る取引記録」という法定帳簿が別にあるからです。

金商法2条8項1号から3号までに掲げる取引は、「売買」「売買の媒介、取次ぎ若しくは代理」です。4号は「店頭デリバティブ取引」なので、ここでは説明を省きます。

媒介と代理は除かれていますので、結局、注文伝票を作成すべき場面は、有価証券の売買と有価証券の売買の取次ぎがあったときに限定されることになります。

ここまで大丈夫ですか?

すると、重要なことは、「売買」と「取次ぎ」とは何かという点ですよね。

<有価証券の売買>
有価証券の売買とは何か?というと、有価証券を買ったり売ったりする行為です。

「そりゃそうだろう」と言われてしまいそうですね。

では、売ったり買ったりする行為とは何ですか?

株券や社債は簡単なので、わざと(?)第二項有価証券を例にとってみましょう。

第二項有価証券のうち、「不動産信託受益権」を考えてみます。

不動産信託受益権は、多くの場合、委託者兼当初受益者(説明を省きますが、現物不動産の所有者、オリジネーターのことです)が、不動産信託受益権を投資家(あるいはSPC)に譲渡するところから始まります。

委託者が金商引業者だった場合を考えてみます。(そうでないと、法定帳簿は不要なため)

委託者は不動産信託受益権を譲渡し、投資家は不動産信託受益権を取得するわけですが、このときは、注文伝票の出番でしょうか?

正解は「NO」です。

「えっ、だって、不動産信託受益権が売られて、投資家が買っているんだから、売買があるじゃないか。売買があったときには注文伝票を作れ!と言ったのにどういうこと?」

私は間違えていません。

では、「どういうこと?」でしょうか。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

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プロフィール

川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。JSL行政書士事務所代表。

JSL行政書士事務所は、200社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

メールマガジン:、読者数国内最多の金融商品取引法専門メールマガジンを金融商品取引業者と金融当局に配信中

JSL行政書士事務所代表
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-3-2 郵船ビルディング1階
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