適格機関投資家特例業務の改正の意味


改正63条につきましては、こちらをご覧ください。


適格機関投資家等特例業務の要件が8月1日から変わる予定でしたが、昨日、関連条文のパブリックコメント回答がでませんでしたので、今日から施行されることはないようです。

<適格機関投資家等特例業務の制度>
適格機関投資家等特例業務とは、原則として、1名以上の適格機関投資家と49名以下の適格機関投資家以外の投資家(一般投資家)が出資者となる組合の自己私募と自己運用が、金融商品取引業に係る登録を受けることなく、届出だけでできるという制度です。

<今回の改正のポイント>
今回の改正は、従来、何ら制限のなかった適格機関投資家以外の投資家の定義を改め、一定の資産規模と投資経験があると認められる者に限定するという内容です。

改正の理由は、特例業務届出者の中には、集めたお金を流用してしまう者もいたため、限られた資産を投資した一般投資家が資産を失うという事件が多発したためと説明されます。

<考え方>
適格機関投資家等特例業務の制度は、2つの観点から考察されなければなりません。

1つは、制度の是非です。

自己私募と自己運用は、本来、金融商品取引業に係る届出を必要とします。登録要件には、人的構成要件として、金商法コンプライアンスに通じた人が原則として求められます。

一方、届出には届出要件というものはありませんから、誰でも自己私募と自己運用ができてしまいます。つまり、適格機関投資家等特例業務は、登録制度を揺るがす例外中の例外で、このような制度を継続する意味があるのか、という観点からの考察が必要です。

もう1つ、考察されなければならない観点は、届出制度を維持するとして、適格機関投資家以外の投資家の範囲を資産家で投資経験の長い者に限定することにどれだけの意味があるのかという点です。

本来的には、悪徳業者の犠牲になったとされる投資家は、制度の不備により犠牲になったのではなく、悪徳業者に騙されたから犠牲になったわけで、悪徳業者に騙されない金融・投資教育を受けていれば、犠牲になることはなかったはずです。

「だから、金融・投資教育を充実させよう!」という話ならわかりますが、制度を見直そうというのは、健全な方向ではありません。

いずれの観点から考察してみても、今回の適格機関投資家特例業務の制度改正に意味があるとは思えません。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

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川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。現在、JSL行政書士事務所代表。コンプライアンス・リスク管理コンサルタントとして、上場会社、が外資系企業など多数の金融商品取引業者の顧問に就任。

JSL行政書士事務所は、100社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

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