金融商品取引法1


「これでわかった!金融商品取引法」は、金商法の実務と理論を結び付けることが目的の一つとなっています。

<目的>
金商法は、目的として「公正な価格形成等を図り」としています。「公正な価格形成」が直接的な目的なのです。

経済発展や投資者保護は、公正な価格形成の結果生じる間接的(副次的)な目的です。

<公正な価格形成>
「公正な価格形成」とは、信託受益権や組合出資持分などの第二項有価証券を含む有価証券やデリバティブ取引の取引価格が、誰もが納得する価格でなければならないという考え方です。

誰もが納得する価格とは、「すべての情報が反映された価格」のことです。

例えば、上場株券は、不特定多数の投資家が自身の情報に基づいて買ったり、売ったりしているわけで、価格に情報が反映されていることから、上場株券の価格は公正な価格であると考えられています。

公正な価格形成のために、金商法がどのような規定・規制を置いているかを見てみましょう。

<金商法の構成>
金商法は、3つのことしか定めていません。

開示規制、行為規制(業者規制)、不公正取引規制の3つです。すべての規制は、公正な価格形成のためにおかれた規制です。

ここさえ押さえておけば、金商法の条文は、ほとんどすべて正しく読めます。(例外は、公開買付規制とインサイダー取引規制です。)

<開示規制>
開示規制は、金商法第2章の規定のことを指しますが、第4条は、有価証券の募集や売出しを行う者は、原則として、「有価証券届出書」を提出することになっています。

有価証券届出書には、有価証券の発行者の情報である「企業情報」と、有価証券そのものの情報である「証券情報」が記載されます。

募集や売出しの対象になる有価証券の価格は、通常、募集の場合は有価証券の発行者が、売出しの場合は有価証券の売出人が決定します。発行者や売出人(売る側)が、決定した価格が、公正な価格である保証はありません。

そこで、金商法は、発行者に企業情報と証券情報を開示(公開)させて、発行者や売出人が決定した価格が妥当かどうかを、投資者(買う側)に判断させる機会を与えているわけです。

有価証券届出書の虚偽記載は、金商法の中では最も重い刑事罰が科されます。

どうしてでしょうか?

ここまで読まれた方はわかると思いますが、投資者にウソの情報が提供されると、投資者は判断を誤り、売る側が一方的に決定した価格で取引する可能性があるため、募集や売出しの対象となった有価証券の公正な価格が確保できないからです。

<弊害防止措置>
行為規制(業者規制)も、公正な価格形成のためにおかれているということは、既にお話した通りです。

例えば、弊害防止措置という規制があります。一種・二種と助言・運用を行う金商業者に対する規制です。

規制の詳細は、「行為規制」について書くときに譲り、弊害防止措置の大まかな内容を押さえておくと、助言・運用の顧客の利益を犠牲にして、一種・二種の顧客の利益を図ってはならないという規制です。

弊害防止措置と公正な価格形成にはどのような関係がありますか?

助言・運用の顧客の利益を犠牲にし、一種・二種の顧客の利益を図った価格は、誰もが納得する価格=公正な価格ではありませんよね。

つまり、弊害防止措置は、公正な価格形成を実現するためにおかれた規制であると理解できます。

<利害関係者との取引の禁止>
助言・運用を行う金商業者は、利害関係者との取引を内容とする助言・運用を行うことが禁止されています。

どうしてですか?

そうです。利害関係者の利益を図り、助言・運用の顧客の利益を犠牲にする可能性があり、公正な価格形成を阻害する可能性があるからです。

<相場操縦>
金商法は、相場操縦を禁止しています。違反者は刑事罰の対象になります。

相場操縦の詳細は、「不公正取引規制」について書くときに譲り、相場操縦の大まか内容を押さえておくと、投資者の取引を誘引する目的など、不正な目的をもって、相場である市場価格を歪める行為です。

相場操縦は、直接的に、公正な価格形成を歪める行為ですよね。だから、刑事罰をもって禁止されているわけです。

<金商法の目的のまとめ>
以上のように、基本的に、金商法の条文は、「公正な価格形成」というキーワードさえ押さえておけば、意味も分かるし、暗記する必要もないことがわかりますよね。

「金商法の目的は公正な価格形成にある!」ということを忘れないようにしましょう。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

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プロフィール

川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。JSL行政書士事務所代表。

JSL行政書士事務所は、200社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

メールマガジン:、読者数国内最多の金融商品取引法専門メールマガジンを金融商品取引業者と金融当局に配信中

JSL行政書士事務所代表
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-3-2 郵船ビルディング1階
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