金融商品取引法2


金融商品取引法を読み切るためには、「定義」の理解が欠かせません。

定義は、「有価証券」から始まります。

<有価証券>
有価証券とは、株券や社債券や投資信託受益権証券といった「モノ」であるというのが、金商法の有価証券の定義です。

有価証券とは「モノ」(紙)であるということは忘れないようにしましょう。

<有価証券表示権利>
ところが、現在は、株券や社債券といったモノが発行されないケースの方が普通です。

そこで、金商法は、有価証券(モノ)が発行されなくても、有価証券に表示されるべき権利は、「有価証券とみなす」としました。

例えば、株券(モノ)は、株券の所有者が発行者に対して、「配当金を支払え!」とか「残余財産を支払え!」と請求できる権利が本質ですので、株券が発行されなくても、この権利を有価証券とみなすということです。

社債券であれば、発行者に「金利を支払え!」とか「元本を返済せよ!」と請求できる権利を有価証券とみなすわけです。

有価証券に表示されるべき権利は、「有価証券表示権利」と呼ばれ、有価証券と有価証券表示権利とを合わせて「第一項有価証券」といいます。

<みなし有価証券>
有価証券表示権利は、有価証券とみなされた権利ですが、どうして、金商法は、有価証券表示権利を有価証券とみなさなければならないのでしょうか?

まず、有価証券というのは、しつこしですが、「モノ」です。ですから、配当金を支払え!とか金利を支払え!という(目に見えない)「権利」は、有価証券ではあり得ません。

でも、有価証券の実質は、権利なんです。

だから、有価証券が発行されても発行されなくても、同等に取り扱うべきだということで、有価証券表示権利は、有価証券とみなされているわけです。

次に、ここが重要ですが、金商法は、有価証券とデリバティブ取引を規制する法律です。この2つに関連する行為や事実以外、何一つ規制していません。

言い方を変えると、有価証券表示権利は、有価証券(モノ)ではないので、このままだと、金商法を適用することができません。

でも、有価証券表示権利は有価証券と同様に取り扱うんでしたよね。

だから、有価証券表示権利を有価証券と「みなして」、金商法を適用するとせざるを得なかったわけです。

<第二項有価証券>
第二項有価証券は、信託受益権や組合出資持分でしたよね。

ちなみに、合同会社の社員権も、第二項有価証券です。だから、原則として、合同会社のために、合同会社の出資者を集める行為は、第二種金融商品取引業です。注意が必要な場面ですね。

信託受益権も組合出資持分も、いずれも所有者が「配当金を支払え!」とか「残余財産を分配しろ!」と請求できる権利です。

信託受益権や組合出資持分に金商法を適用しようとする場合、どうすれ良いのでしょうか?

そうです。信託受益権や組合出資持分を有価証券とみなせば良いのです。だから、信託受益権も組合出資持分も有価証券とみなされているわけです。

ここで、信託受益権と組合出資持分の基本形を簡単に説明しておきます。

<信託受益権>
信託受益権は、所有者が「配当金を支払え!」と請求できる権利だといいました。

信託の仕組みでは、委託者と受託者と受益者の3者が登場します。

信託の基本形においては、「委託者」は自己の所有する財産を信託財産として「受託者」に管理や処分を委託し、受託者は管理や処分の結果生じる収益などを受け取る権利である受益権の所有者である「受益者」に配当金を支払います。

この受益権が、みなし有価証券です。

<組合出資持分>
組合出資持分の基本形においては、組合員が組合に対して金銭を出資し、組合は組合員から出資された金銭で(金商法で)出資対象事業と呼ばれる事業を行い、事業の結果生じた収益を組合員に分配します。

つまり、組合員は、組合に対して「収益を配当しろ!」と請求できる権利を所有していることになります。

この配当請求権が「組合出資持分」という権利であり、金商法で有価証券とみなされているみなし有価証券です。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

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プロフィール

川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。現在、JSL行政書士事務所代表。多数の金融商品取引業者の顧問に就任。

JSL行政書士事務所は、100社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

メールマガジン:、読者数国内最多の金融商品取引法専門メールマガジンを金融商品取引業者と金融当局に配信中

JSL行政書士事務所代表
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-3-2 郵船ビルディング1階
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