金融商品取引法3


金商法で最初に定義づけられている行為は、「募集」と「私募」です。

募集という行為と私募という行為の基本は全く同じです。

募集を何か特別な行為だと勘違いしている人が散見されますが、募集という行為の基本は、私募と変わりません。

分けて考えなければならない場面は、「開示規制」においてのみです。

「募集と私募の基本は同じ!」ということは忘れないようにしましょう。

<募集>
募集(私募も同じです)は、新たに発行される有価証券の取得勧誘のことです。

金商法は、「主語」を省略することが非常に多いです。募集の定義でも、主語が省略されています。

募集の主語は、とても重要ですので、まず、主語を明らかにしておきましょう。

<主語>
募集の主語は、「発行者」です。

株券(株式)であれば、株式会社です。社債の場合は、主として株式会社、投資信託の場合は、投資信託委託会社です。

組合出資持分の場合は?

これは別の機会にお話しますが、無限責任組合員と有限責任組合員がいれば無限責任組合員、いなければ業務執行組合員です。

募集(私募も同じ)の主語は、発行者であるということも忘れないようにしましょう。

<新発>
募集とは、新たに発行される有価証券の取得勧誘です。

「新たに発行される有価証券」は「新発」と呼ばれることがあります。例えば、新たに発行される社債は、「新発債」と呼ばれます。

新たに発行される有価証券(新発)とは、文字通り、まだ発行されていない、これから発行されようとする有価証券のことです。

何もないわけですから、正確に言うと、新発は有価証券ではありません。

新たに発行される有価証券とは、もし発行されたら有価証券になるもののことです。

ここも、重要ですね。

<取得勧誘>
取得勧誘とは、行為です。文字通り、取得することを勧誘する行為です。

投資者に「取得しませんか?」と誘い込む行為を取得勧誘と言います。

後に重要になってきますが、取得勧誘という行為は、金融商品取引業(金商業)となることが多く、実務的には、多くの場合、金融商品取引業者(金商業者)として内閣総理大臣の登録を受けた者でないとできません。

<取得>
ここで、「取得」という言葉の意味を覚えておきましょう。

取得とは、基本的に、新たに発行される有価証券を購入することです。取得勧誘の主語は発行者ですから、発行者から新発を直接購入することを取得と言います。

新発の取引は、決して、「買付け」「売付け」といいません。「売買」は既に発行されている有価証券(既発)にのみ使用できる用語で、新発の取引に売買は、絶対に、存在しません。

新発では、既発の売りに当たる行為が「発行」、買いに当たる行為は「取得」です。

<募集のまとめ>
以上から、募集(私募も)は、有価証券の発行者が、もし発行されたら有価証券となる(これから発行されようとしている)有価証券を、投資者に対して、取得勧誘する行為であるということになります。

募集は、発行者の行為であるという点は、金商法を理解するうえで、極めて重要な点ですので、忘れないようにしましょう。

<売出し>
募集が新たに発行される有価証券(新発)の取得勧誘であるのに対し、「売出し」は、既に発行された有価証券(既発)の売付け勧誘のことです。

募集と対の概念であるため、募集の定義の次に定義されています。

新発なら募集、既発なら売出しだという、単にそれだけのことです。

<主語>
売出しの定義も、主語が省略されています。

売出しの主語は、発行者ではなく、有価証券の所有者です。ここが、募集と売出しの決定的な違いです。

募集の主語は発行者、売出しの主語は所有者ということは、とても重要です。

<売付け勧誘>
募集は、発行者が投資者に新発の取得勧誘を行う行為でした。

売出しは、所有者が投資者に既発の売付け勧誘を行う行為です。

売付け勧誘とは、取得勧誘と行為自体は同じなのですが、売出しは既発の取引であるため、取得という用語を使わないで、売付けという用語を使っているのです。

「新発が取得勧誘なら、既発は買付け勧誘じゃないの?」という指摘はごもっともです。

ただ、金商法は、売出し(売付行為)を前面に押し出し、「売付け勧誘」(正確には、売付け勧誘等)という用語を使用しています。

<私売出し>
「新発には募集と私募があるように、既発には売出しと私売出しがあるの?」

確かに、実務的に「私売出し」という単語が使用されることがありますが、私募と違って、金商法の用語ではありません。

なぜなら、私売出しとは、有価証券の売買に過ぎないからです。

テーマ : 金融商品取引法
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プロフィール

川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。現在、JSL行政書士事務所代表。多数の金融商品取引業者の顧問に就任。

JSL行政書士事務所は、100社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

メールマガジン:、読者数国内最多の金融商品取引法専門メールマガジンを金融商品取引業者と金融当局に配信中

JSL行政書士事務所代表
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-3-2 郵船ビルディング1階
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