金融商品取引法4


第一項有価証券の募集と売出しにおいて、中止しなければならないことは、「期間通算」です。

<勧誘の相手方の数>
期間通算を説明する前に、「勧誘の相手方の数」の数え方について、説明しておきます。

勧誘の相手方の数は、「延べ人数」です。

募集は、有価証券の発行者が、50名以上(適格機関投資家を除く)の投資者に対して行う、新たに発行された有価証券の取得勧誘です。

売出しは、有価証券の所有者が、50名以上(適格機関投資家を除く)の投資者に対して行う、既に発行された有価証券の売付け勧誘等です。

50名未満だと、新発なら私募、既発なら(俗にいう)私売出しです。

募集と私募、売出しと私売出しの違いは、「開示規制」に現れます。

簡単に言うと、募集や売出しの場合、発行者は、有価証券届出書を財務局に提出し、有価証券届出書を提出した発行者は、年度ごとに有価証券報告書を、半期に一度半期報告書を財務局に提出しなければなりません。

発行者にとって、募集と売出しは、お金と時間がかかるというわけです。

これを避けるためには、私募や私売出しを行う必要があります。

募集と私募、売出しと私売出しを分ける指標は、勧誘の相手方の人数です。50名以上か50名未満かという違いです。

ですから、勧誘の相手方の数え方は、とても重要になってきます。

勧誘の相手方の数は、延べ人数で数えます。

A氏に、発行者が新発の取得勧誘を、又は所有者が既発の売付け勧誘を行ったとします。

発行者が、同種の新発の取得勧誘をA氏に行った場合、発行者が行った取得勧誘の相手方の数は、1名ではなく、2名です。

所有者が、同種の既発の売付け勧誘等をA氏に行った場合、所有者が行った売付け勧誘等の相手方の数は、1名ではなく、2名です。

こうやって、勧誘の相手方の数は、延べ人数で数えるのです。

<同一種類の有価証券>
同種の有価証券とは、基本的に、社債の場合であれば、発行者、通貨、利率、償還期限が同一の社債を指します。

この一つでも違えば、同一種類の有価証券ではありません。

ただ、利率が少しだけ違うとか、償還期限が微妙にずれているという場合は、同一種類の有価証券とみなされる場合がありますので、注意が必要です。

実際、連続して発行された、償還期限の微妙に違う社債の募集の取扱いを行った証券会社が、行政処分を受けています。

行政処分の事例

<期間通算>
勧誘の相手方の数の数え方はわかりました。

次に考慮しなければならない点は、勧誘の相手方の数を数える「期間」です。

同一種類の有価証券の勧誘の相手方の数は、新発の場合は6か月間、既発の場合は1か月間の勧誘の相手方の数を合計することになっています。

ですから、連続して私募で発行された同一種類の有価証券の勧誘の相手方の数が6か月通算で50名以上になった場合には、私募ではなく募集です。

売出しについても同じことが言えます。

連続して私売出しで売付けが行われた同一種類の有価証券の勧誘の相手方の数が1か月通算で50名以上になった場合には、私売出しではなく売出しです。

<まとめ>
同一種類の有価証券の勧誘の相手方の数を計算するときには、延べ人数で計算すること、期間通算することを忘れないようにしましょう。

また、同一種類の有価証券とは、社債の場合、発行者、通貨、利率、償還期限が同一であることが金商法上の条件ですが、実務的には、利率が少し違うとか、証券期限が微妙にずれているだけの場合には、同一種類の有価証券とみなされる場面があることにも、要注意です。

テーマ : 金融商品取引法
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プロフィール

川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。JSL行政書士事務所代表。

JSL行政書士事務所は、200社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

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JSL行政書士事務所代表
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