金融商品取引法5


有価証券の発行者は、かなり、難しい概念です。

でも、実務的に重要なので、覚えてしまいましょう。

<第一項有価証券>
第一項有価証券の発行者は、比較的簡単です。

株券の発行者は、当然、株式会社です。社債の発行者は、多くの場合、株式会社です。投資信託の発行者は、投資信託委託会社と呼ばれる運用業者、投資証券の発行者は、登録投資法人と呼ばれるSPC(特別目的会社)です。

では、いつが発行日か?

基本的には、発行者が発行日と決めた日が発行日です。実務的には、発行日と決めた日に投資者から発行者にお金(発行代わり金といいます)が振り替えられた日です。

<第二項有価証券>
第二項有価証券の発行者は、若干複雑です。

信託受益権の場合、委託者にのみ指図権がある場合、発行者は委託者です。

指図権とは、信託した財産(金銭や不動産)の運用の指図権限のことです。信託した金銭で、あれを買え、これを売れと指図できる権限のことです。

本題からは外れますが、指図する相手は受託者、実務的には、信託銀行です。

これで信託受益権の発行者は決まりました。

では、信託受益権の発行日はいつでしょうか。

信託受益権は、受益者が受託者に対して有する権利です。収益や残余財産の配当や分配を請求できる請求権です。

請求権は、委託者が金銭や不動産などを受託者に信託し、信託契約の効力発生日に発生します。

では、信託受益権の発行日は、信託契約の効力発生日でしょうか。

原則は、信託受益権の発行日は、信託契約の効力発生日です。

でも、委託者が当初受益者だった場合い限って、信託受益権の発行日は、信託契約の効力発生日ではなく、委託者兼当初受益者が、信託受益権を譲渡した日と金商法は決めています。

実務的には、委託者は当初受益者であることが多いです。ですから、信託受益権の発行日と言えば、実務では、委託者が信託受益権を第三者に譲渡したときです。

余談ですが、譲渡した日とはいつでしょうか。

委託者と第三者の意思が合致した日ですが、実務では、委託者と第三者が設定した譲渡日のことです。

では、譲渡日から第三者は受益者として、受託者、実務的には、信託銀行に収益の配当や残余財産の分配を請求できることができるのでしょうか。

信託受益権が譲渡され、第三者が受益者となった以上、当然のことのように見えますが、これを認めてしまうと、信託銀行は委託者に配当金を支払えばいいのか、第三者に配当金を支払えばいいのかわかりません。

信託受益権の譲渡は、信託銀行に対しては、委託者が信託銀行に譲渡したことを通知するか、信託銀行が譲渡を承諾するかするまで、対抗できません。

民法を勉強したことがある方は、「これは・・・」と思ったと思います。そうです。債権譲渡の債務者対抗要件です。

なぜ、信託受益権の譲渡に、債権譲渡の債務者対抗要件が適用されるかというと、これまで説明してきたように、信託受益権とは、受益者が受託者に対して有する配当金請求権という債権だからです。

実務では、信託銀行が「信託受益権譲渡承諾書」という書面を作成し、譲渡を承諾します。

閑話休題。

<組合契約の発行者>
組合契約の発行者の考え方は、簡単です。

匿名組合契約の場合、発行者は営業者です。他の組合の場合は、無限責任組合員と有限責任組合員がいる場合(投資事業有限責任組合契約など)には、無限責任組合員です。無限責任組合員しかいない、あるいは、無限責任組合員がいない場合には、業務執行組合員です。

簡単です。

組合出資持分の発行日はいつでしょうか。

ここは統一的に、「契約の効力発生日」と覚えておきましょう。実務上、このように覚えておけば十分です。

<まとめ>
有価証券は発行から始まります。

発行を考えるときには、発行者と発行日の知識が不可欠です。

信託受益権の発行者と発行日が少し複雑ですが、他の有価証券の発行者と発行日は簡単です。

ここで、覚えてしまいましょう。

テーマ : 金融商品取引法
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プロフィール

川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。JSL行政書士事務所代表。

JSL行政書士事務所は、200社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

メールマガジン:、読者数国内最多の金融商品取引法専門メールマガジンを金融商品取引業者と金融当局に配信中

JSL行政書士事務所代表
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-3-2 郵船ビルディング1階
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