金融商品取引法6


金融商品取引業の定義に移りましょう。

金商業の定義は、金商法通りに追ってもよくわからないところがあります。どうしてかというと、金商法にずらりと並んでいる金商業の定義は、一種業務、二種業務、助言業務、運用業務が混在しているからです。

金商業を理解するためには、一種業務、二種業務、助言業務、運用業務ごとに分けて考える方が、効率が良いのです。

一種業務は、基本的に、証券会社の業務ですので、イメージをつかめる方が多いと思います。ちょっとわかりにくい、二種業務から見ていきましょう。

<二種業務>
二種業務(第二種金融商品取引業)の主たるものは、大きく分けると2つです。

「自己募集」と「第二項有価証券の取引」です。

<自己募集>
募集(私募の同じです)は、新たに発行される有価証券の取得勧誘でしたよね。

主語は、「発行者」でした。

募集は、基本的に、金商業ではありません。

例えば、第一項有価証券の場合、株式会社(発行者)が株式を発行して資金調達をしようとするとき、株式の募集をするわけですが、このような株式会社の募集行為は金商業ではありません。

第二項有価証券の場合、委託者兼当初受益者である不動産信託受益権の所有者が、不動産信託受益権を譲渡する行為は、基本的に、不動産信託受益権の発行者である委託者兼当初受益者による不動産信託受益権の募集(又は私募)ですが、このような委託者兼当初受益者の不動産信託受益権の募集行為は金商業ではありません。

募集は、投資家に対する取得勧誘行為ですから、本来、金商法で取り締まるべき行為ですが、政策的かつ実務的な判断から、募集は、金商業ではないのです。

質問が多いところですので繰り返しますが、不動産信託受益権の募集は金商業ではありません。だから、金商業者でなくても、誰でもできます。

例外として、いくつかの有価証券の募集(私募も)が、金商業に当たります。発行者による有価証券の取得勧誘、つまり、募集が金商業になるのは例外なのです。

例外はいくつかありますが、実務的には、2つだけ覚えておくだけで良いでしょう。

1つは、投資信託です。投資信託委託会社と呼ばれる投資信託の発行者が投資信託の募集をする行為は、金商業です。

ですから、二種登録をしていないとできません。

もう1つは、組合出資持分です。

「ファンドで集めたお金で海外の不動産を取得しています」と私の前で堂々と言われてしまうことがあるのですが、「お金を集めて何かに投資する行為」は、ほぼ、例外なく、金商業です。二種登録を受けなければできません。やってしまうと、刑事罰の対象です。

余談ですが、組合出資持分は、金商法施行前から集団投資スキーム持分と呼ばれていますが、金商業に該当するかどうかと、お金を出資した者が「集団」であるかどうかとは、まったく関係がありません。

出資者が1名であっても、1名が持つ組合出資持分は、第二項有価証券であり、出資者を集める行為は、第二種金融商品取引業です。

ですから、例えば、資産家が、自分のお金を運用するためにSPCを作り、SPCと自分との間で匿名組合契約を締結する行為は、SPCにとって二種業務ですから、SPCは二種登録が必要です。

「集団」という単語が誤解を招いているようですので、このブログでは、集団投資スキーム持分といわずに、「組合出資持分」と呼んでいます。

閑話休題。

組合であれば、何でも、ほぼ例外なく、お金を集める行為が二種業務になってしまい、二種登録が必要です。

正確に言えば、組合でなくても、とにかく、何かに投資をしてお金を増やす目的で、他人からお金を預かる行為は、二種業務であり、二種登録が必要なのです。

<まとめ>
募集(私募)は、原則として、金商業ではありません。例外として、投資信託と組合出資持分の募集(私募)は、金商業です。

金商業となる募集(私募)は、金商業に該当する募集(私募)という意味で、「自己募集」(自己私募)と呼ばれています。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

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プロフィール

川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。現在、JSL行政書士事務所代表。多数の金融商品取引業者の顧問に就任。

JSL行政書士事務所は、100社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

メールマガジン:、読者数国内最多の金融商品取引法専門メールマガジンを金融商品取引業者と金融当局に配信中

JSL行政書士事務所代表
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-3-2 郵船ビルディング1階
電話:03-5533-8785
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