金融商品取引法8


前回の私募の取扱いの続きです。

<顧客は誰なのか>
私募の取扱いで注意しなければならないことは、私募の取扱いを行う金商業者の「顧客」は誰なのか、という点です。

私募の取扱いとは、行為だけを見ると、投資家に「買いませんか?」(正確には「取得しませんか?」)と言っているので、まるで、投資家が顧客のように見えますが、違います。

繰り返しになりますが、私募の取扱いとは、私募を行う者、つまり、有価証券の発行者の私募という行為を、発行者に成り代わって行う業務です。ですから、私募の取扱いの顧客は、「発行者」です。

発行者に代わって取得勧誘を行っているので、当然です。

だから、例えば、アマなりの告知(説明は別の機会に譲ります)をする相手は、投資家ではなく、発行者です。

<不動産信託受益権>
だから、例えば、不動産信託受益権の私募の取扱いにおいて、発行者が、委託者兼当初受益者の場合(かつ指図権は委託者のみにある場合)、発行者は委託者です。

したがって、委託者が、資本金5億円以上の株式会社であったり、金融商品取引業者であったりする場合には、委託者に対して、アマなりの告知をしなければなりません。

<外国会社>
発行者が、外国法人の場合に、アマなりの告知をする相手は誰でしょうか。

外国法人は、仮に銀行であっても何であっても、特定投資家(詳細は別の機会にお話します)です。したがって、外国法人が発行者の場合、アマなりの告知をする相手は、外国法人です。

ですから、一般的に、外国法人が有価証券の発行者である場合には、アマなりの告知を英語で行うことになります。

<投資家>
では、投資家にはアマなりの告知をしなくても良いのか?という疑問が残ります。

結論から言うと、金融庁の間違った解釈によると、投資家も私募の取扱いの顧客であるということですので、実務上、投資家に対してもアマなりの告知をしなければなりません。

ただし、投資家に対するアマなりの告知は、法律上の義務ではありません。あくまで、金融庁の間違った解釈によるものです。

<匿名組合契約>
余談になりますが、営業者が匿名組合契約を組成し、自己私募を行う場合、当然のことですが、営業者は第二種金融商品取引業に係る登録を受けることが義務になります。

ところが、金融庁の間違った解釈によると、営業者が一切の取得勧誘をせず、第二種金融商品取引業者に投資家に対する取得勧誘を一切委託した場合には、営業者は取得勧誘をしていないわけだから、営業者は登録不要という実務になっています。

これは、まったくおかしな話です。

なぜなら、営業者が一切の取得勧誘を行っていないのであれば、私募とは取得勧誘のことですから、営業者の行為は、私募に該当しないことになります。

すると、営業者に代わって投資家に対して取得勧誘を行う第二種金融商品取引業者の行為は、私募の取扱いではなくなることになります。

正しい解釈は、営業者の行為は、やはり、私募であり、したがって、第二種金融商品取引業者として、登録を受けなければなりません。

営業者は、取得勧誘を行っていないのではなく、直接的に私募を行っていないだけであって、第二種金融商品取引業者を使って、間接的に私募を行っているのです。

だから、営業者が一切の取得勧誘を行わず、すべて第二種金融商品取引業者に委託したとしても、営業者の行為は自己私募であって、だからこそ、第二種金融商品取引業者の行為は、私募の取扱いになるのです。

以上のように、金融庁の誤った解釈で、私募の取扱いは混乱を見せていますので、正しい解釈をすべきです。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

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プロフィール

川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。JSL行政書士事務所代表。

JSL行政書士事務所は、200社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

メールマガジン:、読者数国内最多の金融商品取引法専門メールマガジンを金融商品取引業者と金融当局に配信中

JSL行政書士事務所代表
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-3-2 郵船ビルディング1階
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