金融商品取引法9


一種業務と二種業務の違いを大雑把に言ってしまうと、一種業務にできて二種業務にできない金商業は「有価証券の引受け」と「保護預かり」、二種業務にできて一種業務にできない金商業は「自己募集」です。

<有価証券の引受け>
有価証券の引受けには、文字通りの行為と、用語からは想像がつかない行為の2つの行為があります。

<買取引受け>
買取引受けは、有価証券の引受けの文字通りの行為です。

買取引受けは、金商業者が販売する目的で、有価証券の発行者から有価証券を仕入れる行為です。この仕入が有価証券の引受けの一種であり、「買取引受け」と呼ばれたりします。

<残額引受け>
一方、残額引受けは、有価証券の引受けという用語からは簡単に想像がつかない行為です。

残額引受けは、金商業者は発行者に対して「もし売れ残りが生じたら、私(金商業者)が、買い取ります」と約束する行為です。

買取引受けにおいては、発行者が有価証券の募集をしてみたものの、投資者の集まりが良くなく、「予定通りの資金調達ができない!」と顔を青ざめる必要がありません。金商業者が残額(売残り)を買い取ってくれるからです。

ここで、重要なことは、残額引受けは、金商業者が発行者から残額を買い取る行為が引受なのではなく、買い取ると「約束する」行為が引受である点です。

重要なので、繰り返します。

買取引受けは、金商業者が「買い取る」行為が引受ですが、残額引受けは、金商業者が買い取る行為が引受なのではなく、買い取ると「約束する」行為が引受です。

例えば、発行者が、有価証券が完売できるかどうか不安がっていたので、金商業者が「大丈夫完売するって。万一完売しなければ私が買い取るから」と発行者と「約束」してしまうと、たとえ、完売して金商業者が買い取る分がなかったとしても、「約束した時点で」有価証券の引受け行為があったことになります。

二種業者は原則として有価証券の引受けができません。一種業者であっても、一部の証券会社以外の会社は有価証券の引受けができません。

有価証券の引受けができない(法律上認められていない)金商業者が、例えば、不動産信託受益権を販売する目的で委託者兼当初受益者(=不動産信託受益権の発行者)から、不動産信託受益権を取得してしまうと、買取引受けとなってしまい、有価証券の引受け行為に関しては、「無登録営業」です。

また、例えば、親しい間柄の匿名組合契約の営業者(=発行者)に、「出資者が予定通り集まらなかったら、うちが出資するから大丈夫」なんて軽々しくいってしまうと、たとえ実際には出資しなくても残額引受けになってしまい、やはり、無登録営業です。

金商業者、特に、二種業者は、十分に注意しましょう。

<保護預かり>
保護預かりという用語は、金商法にはありませんが、証取法時代から伝統的に「保護預かり」という用語が使用されています。

保護預かりとは、顧客から有価証券や金銭を預かる行為であり、一種業務です。ただし、ここで有価証券とはモノを指しますから、権利である(いわゆる)みなし有価証券は含まれません。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

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プロフィール

川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。現在、JSL行政書士事務所代表。多数の金融商品取引業者の顧問に就任。

JSL行政書士事務所は、100社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

メールマガジン:、読者数国内最多の金融商品取引法専門メールマガジンを金融商品取引業者と金融当局に配信中

JSL行政書士事務所代表
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-3-2 郵船ビルディング1階
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