金融商品取引法10


二種業者は、有価証券の引受けができません。有価証券の引受けは、一種業務だからです。

具体的にいうと、不動産信託受益権の発行者である委託者兼当初受益者から販売目的で不動産信託受益権を取得することが認められていません。

あるいは、匿名組合出資持分の発行者である営業者に「出資者が集まらなかったら代わりに出資してやるよ」と約束することができません。

ただし、例外があります。

<有価証券の引受けの例外>
資本金50百万円以上の二種業者が、匿名組合出資持分の発行者(営業者)であるリース事業を行う100%出資子会社から販売目的で、いったん匿名組合出資持分を取得する行為は、有価証券の引受けには違わないのだけれども、金商業に該当しません。

リース会社の実態を反映した条文であって、妥当かどうかは意見の分かれるところです。

また、不動産証券化の二層構造ファンドにおいて、二種業者が、親SPC(営業者)に譲渡する目的で、不動産信託受益権で運用する子SPC(営業者)の匿名組合出資持分をいったん取得する行為は、確かに引受けなんだけれども、金商業には該当しません。

不動産証券化の二層構造ファンドの実態を反映した条文であって、これも、妥当かどうかは意見が分かれるところです。

二種業者は、金銭の保護預りもできません。有価証券(モノ)や金銭の保護預り業務は、一種業だからです。

ただし、例外があります。

<金銭の保護預り>
資本金50百万円以上の二種業者が、私募の取扱いに関して、顧客から金銭を預かる行為は、金銭の保護預りなんだけれども、二種業者が運用業者並みの分別管理をしている場合に限って、認められています。

この場合の保護預り行為を、「特定有価証券等管理行為」といいます。

<自己と委託>
ここまで、募集や私募といった、新たに発行される有価証券の取引を中心に見てきました。

既に発行された有価証券の取引は、自己売買か委託取引のいずれかになります。

<自己売買>
自己売買とは、「自己の名義」で、「自己の計算」で既に発行された有価証券を売買する行為です。

この「自己の名義」とか「自己の計算」という用語は、金商法独特ですが、使い慣れるようにしましょう。

自己の名義とは、金商業者自身の名前という意味で、自己の計算とは金商業者自身のお金でという意味です。

<委託取引>
委託取引とは、「他人の計算」で行われる取引のことです。ここで他人とは、金商業者自身でないことで、一般的に投資者のことを指しますが、他の金商業者も当然他人です。

ちなみに、投資者は「投資」を目的として取引をしますが、金商業者の売買は、通常、「仕入」と「販売」です。

仕入と販売、つまり、商品として売買するので、このような売買を「商品勘定」と呼びます。

一方、金商業者だって、投資を目的として有価証券を売買することもあります。投資を目的とした売買を「投資勘定」と呼びます。

商品勘定と投資勘定を分ける意味は、金商法が適用されるのは商品勘定の売買であって、投資勘定の売買に金商法は(通常)適用されないところにあります。

閑話休題。

委託取引には、媒介と取次ぎと代理があります。

<媒介>
「他人の名義」で「他人の計算」で他人間の取引の成立に尽力する金商業者の行為を売買の媒介といいます。

<代理>
代理権を持って「他人の名義」で「他人の計算」で他人間の取引を成立させる金商業者の行為を売買の代理といいます。

ただし、完全に他人を代理して取引を成立させてしまう行為は、投資運用業になってしまいます。したがって、売買の代理といっても、金商業者には完全な代理権があるわけではなく、例えば、取引価格の決定権など、取引の一部に関する代理権しか金商業者には存在しません。

<取次ぎ>
「自己の名義」で「他人の計算」で他人のために取引を成立させる金商業者の行為を売買の取次ぎといいます。

典型的には、証券会社の上場株式の取引です。顧客は、証券会社に行き(今は、ネットですね)、株式を売買します。このとき、証券会社は、間違いなく、他人の計算、つまり、顧客のお金で取引することになりますが、証券取引所には自己の名義、つまり、証券会社の名義で取引を成立させています。この取引形態が、売買の取次ぎです。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

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プロフィール

川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。JSL行政書士事務所代表。

JSL行政書士事務所は、200社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

メールマガジン:、読者数国内最多の金融商品取引法専門メールマガジンを金融商品取引業者と金融当局に配信中

JSL行政書士事務所代表
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-3-2 郵船ビルディング1階
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