最近の当局検査の動向


3連休最後の今日は、最近の当局検査の動向についてお話しします。

<ポイント>
金融商品取引法務コンサルタントの私は、日本各地の金融商品取引業者の方から、検査についてご相談を受けます。

「検査の予告があったけれども、何をしておけばよいのですか」

「検査の結果、指摘を受けたのですが、どうすればよいのでしょうか」

こういう相談を毎日のように受けています。

<3か月検査のポイント>
現在の当局検査は、大きく2つに分かれます。

一つは、「3か月検査」、もう一つは「通常検査」です。

3か月検査とは、登録後、3か月経った頃に入る検査です。3か月とは意味ある期間です。金融庁は、金融商品取引業者として登録を受けたから、3か月以内に金融商品取引業をしない者の登録を取り消すことができます。ですから、登録後3か月以後に検査が入り、金融商品取引業を行っているかどうかを確認します。

3か月間取引がないと苦労してとった登録抹消が必ず抹消されるか、というとそうではないようです。3か月の間、取引を成立させようと努力はしたんだけれでも、努力むなしく、取引が成立しなかったという者の登録は取り消されていません。

3か月検査のポイントは、取引がいつ成立してもよい体制が整備されているかどうかを確認することにあります。ここで、体制整備とは、大きく2つあり、一つは「社内規則が整備されているか」という点で、もう一つは「法定帳簿が揃っているか」という点です。

ですから、登録して間もない金融商品取引業者、特に、第二種金融商品取引業者は、社内規則と法定帳簿を整備しておかなければなりません。

<通常検査のポイント>
登録後、3か月を過ぎている金融商品取引業に対する検査のポイントは、2つに分かれます。

まだ、取引が一つも成立していない金融商品取引業者は、3か月検査同様、社内規則と法定帳簿の整備ができているかが重点的に検査されます。

取引ができている金融商品取引業者は、成立した取引に違法性がなかったかどうかが、重点的に検査されます。違法性の確認は、広告・勧誘の段階、契約締結前の段階、契約の段階、契約成立後の段階と、各段階で行われます。万一に、いずれかの段階で、法令違反が発見されると、行政処分の対象となることがあります。

ですから、取引ができている金融商品取引業は、「内部監査」をしっかり行い、過去に成立した取引の各段階において違法性がなかったことを監査しておかなければなりません。

具体的には、十分な広告審査規程はあるか、広告・勧誘は広告審査規程にしたがい審査されているか、契約締結前交付書面は顧客に交付されているか、契約締結時交付書面が交付されていうか、取引残高報告書が顧客に送られているかなどが検査対象になります。

特に、実効性のある広告審査と、正確な契約締結前交付書面の作成は、通常検査における最大のポイントになります。ここは、投資者保護に直結するからです。

通常検査でも、もちろん、社内規則や法定帳簿の整備状況が検査の対象になります。また、正確・確実に、当局への届出事項が届け出られているかも、集中的に検査されます。

<ごまかしは厳禁>
「じゃあ、今から過去の取引を社内で確認して、問題があった場合には、手元で治してしまおう」というごまかしはご法度です。

これをやると、検査忌避であり、最悪懲役刑です。

<検査対策>
3か月検査を受けるにせよ、通常検査を受けるにせよ、検査対策は必須です。ただ、検査対策とは、結局、内部管理態勢の整備と、整備された内部管理態勢の実効性を確保することに他なりませんから、普段から、内部管理態勢の検証・見直しが、必須だということです。

<コンサルタント選びのポイント>
内部管理態勢の検証は、原則として、自社のみで行うべきです。でも、場合によっては、分からない点が出てきて、コンサルタントである弁護士や行政書士に相談する場面も出てくることもあります。

このようなときのコンサルタントの選び方のポイントは、そのコンサルタントは金融商品取引業者でコンプライアンスを担当し経験があるか、さらに、金融商品取引業者で責任者として当局検査を受けたことがあるかを確認することです。

「私は、金融商品取引業者のコンプライアンス担当の経験はないが、検査についてクライアントから聞いて知っている」と言って、検査対策を引き受けている弁護士や行政書士がいますが、未経験でどうやってコンサルティングするのかわかりません。

<まとめ>
繰り返しになりますが、当局検査対策とは、内部管理態勢の整備に他なりません。つまり、コンプライアンスが機能し、実効性のある内部監査が行われるなど、当たり前のことを普段から行っていることが、当局検査対策になっています。

金融商品取引業者の「当たり前」を実行に移していない金融商品取引業者が、当局検査で指摘を受けることは、当然のことなのです。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

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プロフィール

川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。JSL行政書士事務所代表。

JSL行政書士事務所は、200社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

メールマガジン:、読者数国内最多の金融商品取引法専門メールマガジンを金融商品取引業者と金融当局に配信中

JSL行政書士事務所代表
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-3-2 郵船ビルディング1階
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