金融商品取引法12


金融商品取引業(金商業)の定義を見てきましたが、次に、金商業から例外的に除かれている行為を見てみましょう。

<勧誘のない信託受益権の販売>
信託受益権の販売は、業として行うのであれば、有価証券の売買に該当しますので、金商業です。

ただし、例外として、信託受益権の販売であっても、金商業者(二種業や)に、代理又は媒介させ、所有者自身は、一切勧誘しない場合には、金商業に該当しません。

ここで、注意が必要なことは、例外の対象になっているものは、信託受益権に限るという点です。

株式や社債はもちろん、組合出資持分も、販売に際して、金商業者に勧誘の全部を委託したとしても、販売行為は有価証券の売却であり、金商業です。

勧誘のない販売の例外規定は、信託受益権の販売にのみ適用があるという点を忘れないようにしましょう。

なお、信託受益権の所有者が販売に際し、勧誘の全部を金商業者に委託しているかどうかの判断材料の一つとして、所有者は、代理又は媒介に係る業務委託契約書など書類をもって、金商業者に勧誘の全部を委託していることを明らかにしなければなりません。

所有者が金商業者に口頭だけで勧誘の全部委託をしても、金商業から除かれる行為にならず、所有者による信託受益権の販売行為は、金商業に該当します。

<商社によるデリバティブ取引>
例えば、差金決済による外国為替先渡取引は、店頭デリバティブ取引ですし、通貨の売買を対象とするオプション取引も、店頭デリバティブ取引ですが、例外として、商社が商取引において、相手方事業者のヘッジポジションを作るためにするこれらの店頭デリバティブ取引は、金商業から除かれています。

<リース会社による引受け>
リース会社が、匿名組合契約の出資持分を投資者に取得させるために、営業者から取得する行為は、有価証券の引受けとなり(買取引受け)、一種業者でなければできません。

ところが、航空機リース事業案件においては、金商法の施行より前から、リース会社の100%子会社が匿名組合契約の営業者となり、営業者が航空機を購入して航空会社にリースするための資金調達方法として、リース会社がいったん匿名組合契約に基づく、出資持分を取得するという実務が存在していたことから、このような場合には、リース会社が投資者に取得させる目的で、発行者である営業者から出資持分を取得しても、有価証券の引受けに該当しないという例外規定が設けられています。

この場合、リース会社の資本金1000万円ではなく、5000万円以上であることが必要です有価証券の引受けは、売買等に比べリスクが高いと考えられているからです。

<不動産二層構造ファンド>
不動産信託受益権で運用する営業者が発行者となる匿名組合契約に基づく組合出資持分を、他の者に取得させる目的で、営業者から取得する行為は、有価証券の引受けであり、一種業者でなければできません。

ただし、二種業者が、不動産信託受益権で運用する子SPCの組合出資持分をいったん取得し、親SPCに取得させる行為は、有価証券の引受けから除かれています。

<運用権限の全部委託>
例えば、匿名組合契約の営業者が、投資者から出資された金銭を、主として有価証券又はデリバティブ取引で運用する行為は、自己運用であり、運用業者でなければできません。

ただし、この場合、営業者が運用権限の全部を運用業者に委託すれば、一定の要件のもと、営業者の行為は、自己運用に該当しません。

<二層型不動産ファンドの自己運用>
営業者が、出資者から出資された金銭を主として不動産信託受益権で運用する行為は、自己運用であり、営業者は運用業者である必要があります。

ただし、この場合、出資者が他の匿名組合契約の営業者であり、かつ、運用業者等である場合には、営業者の行為は、自己運用から除外されます。

<特定有価証券等管理行為>
不動産信託受益権や組合出資持分の私募の取扱いを行う際、顧客から金銭の預託を受ける行為は、有価証券等管理業務(第一種金融商品取引業の一つ)です。

ただし、この場合、資本金5000万円以上の二種業者が、分別管理をした上で、金銭の預託を受ける場合には、特定有価証券等管理行為として、第一種金融商品取引業から除かれています。

分別管理をしていることが、前提となっていることに、注意が必要です。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

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プロフィール

川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。現在、JSL行政書士事務所代表。多数の金融商品取引業者の顧問に就任。

JSL行政書士事務所は、100社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

メールマガジン:、読者数国内最多の金融商品取引法専門メールマガジンを金融商品取引業者と金融当局に配信中

JSL行政書士事務所代表
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-3-2 郵船ビルディング1階
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