金融商品取引法14


有価証券(有価証券投資事業権利等を含む。)の募集又は売出しは、発行者が内閣総理大臣(実務的には財務局長)に届出を行っていない場合は、できません。

ただし、ここは例外が多いです。

<届出の免除>
1 一定の範囲のストックオプションは、届出義務が免除されています。所有しようとする者が、発行者に関する情報を知っているか、知らなくても容易に知ることができるからです。

2 既に開示が行われている有価証券の売出しは、届出義務が免除されます。

3 金商業者が行う外国で既に発行された有価証券の売出しのうち、国内で売出しの対象となる有価証券の売買価格に関する情報を容易に取得することができることその他の要件を満たすものは、届出が免除されます。

この規定は、平成22年4月1日に施行された平成21年改正金商法で追加されたものです。「外国証券売出し」と呼ばれる売出しです。

外国証券売出しについては、後で、まとめて説明することにします。

4 発行価額又は売出価額の総額が1億円未満の有価証券の募集と売出しは、原則として、届出義務が免除されます。

ここは、説明が必要です。

<発行価額>
まず、発行価額の意味です。

有価証券の募集の際の一単位当たりの有価証券の価格には、「発行価額」と「発行価格」があります。

発行価額とは、有価証券の発行者が有価証券の発行によって、一単位当たりに受け取る金額のことです。

一方、発行価格は、有価証券を引き受けた証券会社が、投資家に販売する一単位当たりの価格です。

発行価格と発行価額の差は、有価証券の引受けを行った証券会社の手数料になります。

「1億円未満」の要件は、発行価額の総額が1億円未満の場合であって、発行価格の総額ではないことに注意が必要です。

だから、発行価格の総額が1億円であっても、通常、証券会社は手数料を取りますから、発行価額の総額は1億円未満であるはずで、このような場合は、原則として、届出義務が免除されるということです。

<特定募集>
発行価額の総額が1億円未満の有価証券の募集などを「特定募集」と言いますが、特定募集を行い、有価証券の取得をさせる際に使用する資料には、金商法4条1項(届出義務の規定)の適用を受けないものである旨を表示しなければなりません。

<有価証券通知書>
特定募集と、既に開示が行われている有価証券の売出しを併せて、「特定募集等」と言いますが、特定募集等が行われる場合には、発行者は、特定募集等が開示される前日、つまり、勧誘が開始される前日までに、原則として、「有価証券通知書」を財務局長に提出しなければなりません。

ただし、発行価額の総額が1000万円以下の場合には、有価証券通知書の提出も不要です。

有価証券通知書は、開示書類ではありません。文字通り、監督当局に対する通知で、監督当局に監督させるための書類です。

なお、実際に勧誘が行われたか否かにかかわらず、勧誘は有価証券通知書の提出日の翌日から行われたものとみなされます。

<通算規定>
開示は、例外規定が多いところにもってきて、例外の例外規定まであるため、非常に読みにくいのですが、頑張りましょう。

発行価額の総額が1億円未満であって、届出義務が免除される募集であっても、募集を開始する日(発行日ではない!)前1年以内に行われた募集に係る有価証券と同一種類の有価証券の発行価額の総額を通算すると1億円以上となる場合には、届出義務が生じます。

ここで、「同一種類の有価証券」とは、社債の場合は、「社債」です。「発行者、通貨、利率、償還期限が同一・・・」の同一種類の有価証券とは、意味が違うので危険です。

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川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。現在、JSL行政書士事務所代表。多数の金融商品取引業者の顧問に就任。

JSL行政書士事務所は、100社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

メールマガジン:、読者数国内最多の金融商品取引法専門メールマガジンを金融商品取引業者と金融当局に配信中

JSL行政書士事務所代表
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