金融商品取引法15


有価証券の募集又は売出しに係る届出をしようとする発行者は、有価証券届出書を内閣総理大臣(実務的には財務局長)に提出しなければなりません。

この届出書を、「有価証券届出書」といいます。

<発行者による提出>
募集で資金調達をするのは発行者です。ですから、発行者に有価証券届出書を提出させる意味はわかります。

一方、売出で資金調達をするのは、通常、発行者ではなく、有価証券の所有者です。ですから、情報を開示する義務は、有価証券の所有者である売出人という考え方もあります。

ただ、有価証券届出書の重要な要素である発行者に関する情報(企業情報といいます)を一番よく知っているのは発行者です。なので、売出しに際しても、発行者に有価証券届出書の提出を義務付けています。

<有価証券届出書の概要>
有価証券届出書は、次の3つの情報からなります。

1 証券情報

2 企業情報

3 提出会社の保証会社等の情報

4 特別情報

<証券情報>
証券情報とは、募集又は売出しに関する情報です。

社債であれば、銘柄、券面総額、各社債の金額、発行価格の総額、利率、利払日、利息支払の方法、償還期限等を記載します。

<企業情報>
企業情報とは、発行者に関する情報です。

企業の概況、経営指標等の推移、沿革、事業の内容、関係会社の状況、従業員の状況、業績等の概要、対処すべき課題等を記載します。

<組込方式>
ただし、既に、一定の有価証券報告書(「届出書」ではありません)を1年間継続して提出している発行者は、直近の有価証券報告書等の写しを有価証券届出書にとじ込み、一定の事項を記載することにより、企業情報に代えることができます。

有価証券報告書に企業情報が記載されているからです。

<参照方式>
また、既に、一定の有価証券報告書を1年間継続して提出している発行者は、直近の有価証券報告書等を参照すべき旨を有価証券届出書に記載したときは、企業情報の記載をしたものとみなされます。

後で説明する通り、有価証券報告書は、企業情報ですので、組込方式や参照方式が認められます。

<外国会社届出書>
「英文開示」と呼ばれる制度で、有価証券届出書を提出しなければならない外国会社は、一定の場合、有価証券届出書の提出に代えて、外国において開示が行われている英文の書類を提出することができます。

この場合、公益又は投資者保護のため必要かつ適当なものの要約の日本語による翻訳文を添付しなければなりません。

<効力発生日>
有価証券の募集又は売出しが行われる際は、原則として、有価証券届出書が提出されていなければ、発行者も金融商品取引業者も、有価証券の取得勧誘や売付け勧誘等をすることができません。

有価証券届出書が提出されれば、発行者や金融商品取引業者は、有価証券の取得勧誘又は売付け勧誘等を行うことはできるようになりますが、実際に取得させ、又は売付けるためには、有価証券届出書の届出の効力が発生していなければなりません。

届出の効力が発生する日は、有価証券届出書が受理された日から15日が経過した日です。

実務的には、有価証券届出書が提出されると、仮目論見書で勧誘が行われ、訂正目論見書が提出されて効力が発生したときから目論見書で勧誘が行われると同時に取得させ、又は売付けることになります。

<目論見書>
届出義務のある発行者は、募集又は売出しに際し、目論見書を作成しなければなりません。目論見書にも証券情報と企業情報が記載されます。

有価証券届出書が、EDINETを通じてネットで提供される情報であるのに対し、目論見書は、直接、投資家に交付される書類です。ですから、有価証券届出書を間接開示、目論見書を直接開示と呼ぶ人もいます。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

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プロフィール

川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。JSL行政書士事務所代表。

JSL行政書士事務所は、100社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

メールマガジン:、読者数国内最多の金融商品取引法専門メールマガジンを金融商品取引業者と金融当局に配信中

JSL行政書士事務所代表
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-3-2 郵船ビルディング1階
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