第二種金融商品取引業(5)


第二種金融商品取引業の登録のハードルは決して高くありません。1000万円の資本金があり、ある一定の要件さえ満たしていれば、自動的に登録されます。ただ、宅建主任者が一人しかいない宅建業者が第二種金融商品取引業の登録を受けるのは困難な場合があります。

<不動産信託受益権等売買等業務>
漢字ばかりが並ぶので目が痛くなりそうですが、金融商品取引法は、不動産信託受益権の売買や不動産信託受益権に投資する組合契約の締結を、特に、「不動産信託受益権等売買等業務」と呼んで、不動産信託受益権等売買等業務を行おうとする者の登録のハードルを他の金融商品取引業者よりも多少あげています。

登録の申請をするときには、財務局の審査を受けなければなりませんが、審査基準の一つとして、金融商品取引法は、不動産信託受益権等売買等業務を行おうとする会社には、①業務を統括する部門、②内部監査部門、③コンプライアンス部門のそれぞれの部門に、宅建主任者を置くことを実質的に要求しているからです。さらに、コンプライアンス部門の統括者を置く場合には、宅建業法ではなく、金融商品取引法の知識と経験がある者を設置しなければなりません。

もっとも、実務的には、かなりいい加減な審査がされていて、宅建主任者でなくても、宅建業の経験が長いということを証明する履歴書を添付したり、不動産信託受益権に関連する法令の研修を受講した受講証明書を添付したりするだけで、登録ができてしまっている場合があり、財務局は、法令の趣旨とかけ離れた審査をしていることは確かなようです。

<問題点>
ただし、当局の検査を受けると話は別です。当局検査は、法令の趣旨通りの人的構成になっているかを実質的に検査しますから、宅建主任者でないものが業務を統括していたり、内部監査やコンプライアンスを担当していたりした場合には、「虚偽の登録申請」と行ったとして、登録抹消を含む行政処分を行います。事実、人的構成が法令通りになっていないため、虚偽の登録申請を行ったという理由で行政処分を受けた金融商品取引業者が既に出ていますし、最悪の場合、懲役刑ですので注意してください。

<営業部門と内部管理部門>
「営業部門の者が内部監査やコンプライアンスを兼務することは可能か」という質問をよく受けますが、私はダメですと回答しています。自動車のアクセルとブレーキを一つのレバーにしても良いかという質問と同じで、不可能だからです。この点も、運よく、財務局の審査を通っても、検査でコテンパンにやられますから、内部監査部門やコンプライアンス部門といった内部管理部門は、営業部門から独立させておくことが必要です。

また、本来は、内部監査部門とコンプライアンス部門も分離しなければなりません。そうしないと、コンプライアンス部門を監査できる部門がなくなってしまうからです。

<コンプライアンス担当者>
余談ですが、私の16年のコンプライアンス経験でいうと、残念ながら(?)、当局検査は、社長など経営者ではなく、コンプライアンス担当者を集中的に責めます。責めるというと語弊があるかもしれませんが、法令違反が見つかったときはもちろん、組織が法令の趣旨通りになっていなかった場合にも、組織を放置したコンプライアンス担当者の責任になります。

金融商品取引業者等のコンプライアンス担当者につきましては、いつか別のタイトルでお話する予定ですが、当局検査の際には、かなり過酷な状況に置かれることは確かで、第二種金融商品取引業や投資助言・代理業の登録を受けた金融商品取引業者のコンプライアンス担当者がノイローゼになったとか、すぐに会社を辞めてしまったということは、よく耳にする話です。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

コメント

非公開コメント

プロフィール

川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。現在、JSL行政書士事務所代表。多数の金融商品取引業者の顧問に就任。

JSL行政書士事務所は、100社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

メールマガジン:、読者数国内最多の金融商品取引法専門メールマガジンを金融商品取引業者と金融当局に配信中

JSL行政書士事務所代表
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-3-2 郵船ビルディング1階
電話:03-5533-8785
http://office-jsl.com/

<お問い合わせ>
お問い合わせは、お問い合わせフォームで受け付けます。

<主な業務>
主な業務は、主な業務をご覧ください。

ブログの内容は個人的見解ですので、正確性は保証いたしません。また、ブログの内容に関する質問を含め、質問には一切回答いたしかねますので、ご了承ください。

プライバシーポリシー

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
Translation
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード