リアルキャピタルマネジメンに対する行政処分勧告


平成26年10月17日(金)、証券取引等監視委員会は、株式会社リアルキャピタルマネジメント(二種・助言)を関東財務局長が検査した結果、問題が認められたとして、金融庁長官に対して、行政処分を行うように勧告しました。

<特例業務届出者に適格機関投資家を紹介する行為>
証券取引等監視委員会の公表によると、同社は、適格機関投資家等特例業務の届出希望者に対して、適格機関投資家を紹介していたということです。

おそらく、これだけで、同社は行政処分を免れなかったでしょう。

適格機関投資家等特例業務とは、1名以上の適格機関投資家と49名以下の適格機関投資家以外の投資家(一般投資家)が、匿名組合契約や投資事業有限責任組合契約に基づいて金銭の出資を行い、営業者や無限責任組合員(GP)が、運用を行うファンドの仕組みです。

出資する適格機関投資家は、明文規定はありませんが、ファンドの適法性などについて、監視する役割を担っています。自ら出資するので、当然、ファンドの適法性などについて、興味もあるし、調査するだろうということが前提にあります。

公表によると、同社は、適格機関投資家等特例業務の届出を希望する者に対して、適格機関投資家を紹介していたんだけれども、紹介料を届出者が集めたファンドから受領していただけならまだしも、適格機関投資家にもファンドからお金が回る仕組みを作り、結局、実質的に、紹介されたという適格機関投資家は1円も投資していなかったという実態を作り上げていたということです。

こんな仕組みを使った同社はけしからん!というわけです。

<廃止論と存続論>
同社は、確かにけしからんですが、問題の根本的な所在は同社ではありません。なぜなら、適格機関投資家等特例業務の届出希望者に適格機関投資家を紹介してはならないとする規制はありませんし(あったら、経済活動の自由を阻害するので問題)、適格機関投資家等特例業務において、ファンドの監視役である適格機関投資家が実質的に1円も投資していない実態を作り上げたのは、紹介された適格機関投資家の方であって、同社ではないからです。

同社は、計画書を作っただけで、計画書に従って実際に行動したのは、特例業務届出者であり、適格機関投資家です。

でも、金商法違反で行政処分を受けそうなのは同社だけです。なぜでしょうか。

金商法の行為規制が適用できる相手方は、同社のような金融商品取引業者に限っていて、特例業務届出者や適格機関投資家には、一部の例外を除き、金商法の行為規制が適用されないからです。

これは、何を意味するかというと、金商法は、自らの権限の及ばない業者(特例業務届出者)を自ら作り出していることを意味します。

つまり、適格機関投資家等特例業務は、制度の存在自体が、金商法の中で矛盾を起こしていると言えます。

適格機関投資家等特例業務の廃止論は根強くある一方、金商法という規制でがんじがらめにされては金融イノベーションを阻害するとか、そもそも金融(お金の流れ)に支障をきたすとする存続論も根強くあります。

そもそも論として、金融の担い手は銀行ですし(金融庁は金融商品取引業者を「金融機関」と呼びません)、日本における金融イノベーションはコメの先物取引くらいのもので歴史上稀有ですし、第一、制度がイノベーションを阻害するとは考えにくいです。

適格機関投資家等特例業務の制度は、金商法の中で矛盾を起こしているという点は指摘した通りで、廃止論と存続論について、廃止論の方が優勢です。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

プロフィール

川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。JSL行政書士事務所代表。

JSL行政書士事務所は、200社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

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JSL行政書士事務所代表
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