投資運用業の登録1


適格機関投資家等特例業務の制度の変更に伴い、これまで投資助言業務の登録(助言登録)のみで、資産の運用を行ってきた助言業者に、変化が起こっています。助言登録のみでは足りなくなり、投資運用業の登録(運用登録)をする必要性に迫られているのです。(AM問題)

<従来のアセットマネジメント(AM)業務>
資産運用の手段として多く活用される方法に、GK-TKスキームや投資事業有限責任組合スキームがあります。ここでは、GK-TKスキームを例にとって、AM問題の概要について説明します。

GK-TKスキームは、GK(合同会社)が営業者となって、匿名組合員という出資者とTK(匿名組合)契約を締結し、出資者から集めた金銭を有価証券で運用したり、事業で運用したりして、収益をTK持分出資者に配当する仕組みです。

GKは、合同会社という会社ではありますが、証券化スキームにおいては、導管体とかconduitと呼ばれるもので、意思決定権がありますが、「箱」として活用されます。

箱ですから、運用に関する専門性は備えていません。ここで、登場するのが助言業者(AM)です。

箱に集まったお金を助言業者が助言を行い、意思決定権のあるGK(合同会社、箱)が、助言業者の運用に関する助言に従って、TK出資持分の取得者から集めた金銭を運用します。

ここで、大きな不都合が生じます。

<自己運用の問題>
GK-TKスキームで、GKがTK出資持分の取得者から集めた金銭を「有価証券」で運用する行為は、金商法2条8項15号に規定する「自己運用」と呼ばれる「投資運用業」の一つです。

自己運用を行うGKは、運用登録が必要になります。

運用登録については後で詳しくお話ししますが、運用業者は、取締役設置会社でなければならない、資本金・純資産とも5000万円以上でなければならないなど、他にも多数の制約があり、GKが運用登録をすることは不可能ですし、仮に、可能であったとしても、箱のために、運用登録に伴うコストを負担することは誰にもできません。

ここで、従来から「適格機関投資家特例業務」が活用されてきました。

<適格機関投資家等特例業務>
適格機関投資家等特例業務とは、どのような業務かというと、「自己募集」(自己私募)と「自己運用」です。

適格機関投資家特例業務は届出制度です。

届出者のことを「特例業務届出者」といいますが、特例業務届出者は、運用登録をすることなく、届出だけで自己運用を行うことが金商法で認められています。人的要件も、資本要件もありません。

金商法の「登録制度の原則」の大きな例外規定です。

証券化ビジネスにおけるGK-TKスキームでいえば、GK(合同会社、箱)は、特例業務届出者になれば、自己運用ができるわけですから、運用登録をしなくても、AMの助言に従って、金銭を有価証券で運用することができます。

<AM問題>
この、適格機関投資家等特例業務の規制が厳しくなる方向で検討がされています。

結論だけいうと、もし、適格機関投資家等特例業務の規制が厳しくなると、GKが従来通り特例業務届出者になっても、自己運用ができなくなる可能性があります。

GKが特例業務届出者として自己運用ができるという制度のメリットが失われれば、当然、運用登録をしていない助言業者(AM)は、GKに助言ができなくなります。なぜならば、自己運用ができないGKに助言をしても意味がないからです。

投資運用業には、4つの種類がありますが、このうちの一つは、顧客(権利者と呼ばれます)の金銭を有価証券で運用する権限を権利者から与えられ、権利者に代わって(権利者のために)、自己裁量で権利者の金銭を運用できる行為です。

GK-TKスキームに当てはめると、AMが、GKの金銭を有価証券で運用する権限をGKから与えられ、GKに代わって、自己裁量でGKの金銭の運用ができる行為が、投資運用業(運用業務)の一つだということです。

権利者から運用権限を与えられ、権利者に代わって自己裁量で運用を行うための契約を「投資一任契約」といいますが、AMが投資一任契約をGK(権利者)と締結して、GKの金銭を有価証券で運用する行為は、運用業務ですから、当然のことながら、AMは、運用登録をしなければなりません。

この場合、投資対象となる有価証券の種類を問いません。つまり、株式や社債で運用するGKであっても、不動産信託受益権や組合出資持分で運用するGKであっても、GKが自己運用をできない状況で、AMの助言に従ってGKが有価証券で運用してしまうと、GKかAMが、いずれかが、運用登録をしていないという理由で、刑事罰の対象になります。

GKは運用登録を受けないで自己運用をした罪、AMは運用登録を受けないで投資一任契約に基づき運用(投資一任業)を行った罪です。

仮に、適格機関投資家特例業務の規制が厳しくなり、GKが自己運用をできなくなると、助言登録のみでGK-TKスキームでGKに助言をしてきたAMの存在が認められなくなるというのが、AM問題です。

AMが、適格機関投資家等特例業務の制度変更に影響を受けることなく、AM(アセットマネージャー)としての機能を発揮し続けるためには、AMは運用登録が必要になるわけです。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

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川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。現在、JSL行政書士事務所代表。多数の金融商品取引業者の顧問に就任。

JSL行政書士事務所は、100社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

メールマガジン:、読者数国内最多の金融商品取引法専門メールマガジンを金融商品取引業者と金融当局に配信中

JSL行政書士事務所代表
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-3-2 郵船ビルディング1階
電話:03-5533-8785
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