ファンドと金融商品取引法


有価証券には、必ず、発行者がいます。発行者が有価証券を発行して、初めて、有価証券が生まれます。

株券の発行者は、株式会社です。

社債の発行者は、株式会社を中心とする会社です。

投資信託の発行者。ここはちょっと複雑な関係がみられますが、投資信託委託会社という投資家から集めたお金を株券や社債で運用する会社です。

では、金商法で有価証券とみなされる匿名組合契約に基づく権利の発行者は誰でしょうか。

<匿名組合契約>
匿名組合契約とは、営業者と呼ばれる事業者と、匿名組合員と呼ばれる投資家との間で締結される契約で、投資家が事業者に金銭を拠出(出資)して、事業者が事業を行い、出資者が、事業者に対して、組合出資持分の数に応じて、「収益を配当せよ」とか「金銭を分配せよ」と請求できる権利を生じさせる契約です。

「収益を配当せよ」とか「金銭を分配せよ」と出資者が事業者に請求できる権利が、金商法では有価証券とみなされて、有価証券とみなされた権利に対して金商法は適用されます。

この権利の発行者は誰か問う問題です。

きめの問題ですが、金商法は、「営業者」を発行者と決めました。

だから、匿名組合契約に基づき生じる権利の発行者は営業者(事業者)です。

<投資事業有限責任組合契約>
他にも、任意組合契約、投資事業有限責任組合契約、有限責任事業組合契約などがありますが、基本的な仕組みは匿名組合契約と同じで、出資者が金銭を出資し、事業が行われ、出資者が事業者に対して有する請求権(権利)が金商法で有価証券とみなされて、権利に対して金商法が適用されます。

有価証券には必ず発行者がいるわけですが、任意組合契約の発行者は無限責任組合員、投資事業有限責任組合契約の発行者は、無限責任組合員であると金商法が決めています。

<募集>
発行者が、新たに発行しようとする(これから発行する・まだ発行されていない)有価証券の取得の申込みの勧誘を行う行為を、原則として、「募集」といいます。

「取得の申込みの勧誘」とは、文字通り、取得の申込みを勧誘する行為であって、「取得したい!と申し込んでくれませんか?」と誘う行為のことを指します。何とも回りくどい言い方ですが、金商法は、募集とは、新たに発行される有価証券の取得の申込みの勧誘(取得勧誘)であると決めています。

株券の発行者である株式会社が、新たに発行される株券の取得勧誘を行う行為が募集、社債の発行者である会社が、新たに発行される社債の取得勧誘を行う行為が募集、投資信託委託会社が、新たに発行される投資信託の取得勧誘を行う行為が募集です。

<私募>
ただし、例外として、取得勧誘の相手方の数が50名未満である取得勧誘は「少人数私募」、取得勧誘の相手方が適格機関投資家に限定される取得勧誘は「プロ私募」と呼ばれる、「私募」に該当し、募集と区別されますが、行為自体は、新たに発行される有価証券の取得である点において、募集も私募も共通です。

同様に、匿名組合契約の営業者(事業者)が、匿名組合員(出資者)に対して行う、組合出資持分(権利)の取得勧誘は、募集です。例外として、取得勧誘を行った結果、所有者の数が500名未満となる取得勧誘は「私募」になります。

「組合出資持分の取得勧誘」という言葉は、一瞬、何のことかわかりませんが、事業者が出資者になるであろう者に対して、「匿名組合契約を結んで、金銭を拠出(出資)しませんか?」と誘う行為のことです。

なお、株券、社債、投資信託については、私募に「少人数私募」と「プロ私募」の区分がありますが(法律上はもう一種類の私募があります)、組合出資持分については、私募は一種類しかありません。

また、株券、社債、投資信託の私募は、「勧誘の相手方」に注目しますが、組合出資持分の私募は、「所有者」に注目します。

株券、社債、投資信託の少人数私募は、「勧誘の相手方の数」が50名未満でしたが、組合出資持分の私募は、「所有することとなる相手方の数」が500名未満である取得勧誘のことです。

だから、株券、社債、投資信託の私募は、ホームページ(サイト)で行うことができませんが(50名以上に対して取得勧誘を行ってしまうことになるため)、組合出資持分の私募は、勧誘の相手方の数に制限がありませんから、サイトで行うことができます。組合出資持分は、何十億人に取得勧誘を行っても、所有することとなる相手方の数が500名未満であれば私募だからです。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

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プロフィール

川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。現在、JSL行政書士事務所代表。多数の金融商品取引業者の顧問に就任。

JSL行政書士事務所は、100社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

メールマガジン:、読者数国内最多の金融商品取引法専門メールマガジンを金融商品取引業者と金融当局に配信中

JSL行政書士事務所代表
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-3-2 郵船ビルディング1階
電話:03-5533-8785
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