法定帳簿と定義1


2015年、あけましておめでとうございます。

年が変わっても、「これでわかった!証券取引法」から10年以上続いている「これでわかった!金融商品取引法」は、これまでどおり、金融商品取引業者の「現場の疑問や悩みの解決」を提供し続けます。

<法定帳簿の書き方>
「法定帳簿の書き方がわからない」というご質問は毎年減ることがありません。

法定帳簿は、金商業等府令に「記載項目」が書いてありますが、いつ、どんな場面で作成すれば良いのかは書いてありません。いつ、どんな場面で作成する必要があるかという知識は、持っていることが当然という前提で金商法が作られているからです。

なんでこんな前提があるかというと、実は、証券取引法時代、それも昭和の時代に、大蔵省証券局から、法定帳簿の書き方の手引きが、証券会社各社に送られているからです。このことを知っている人は、もう、私のように昭和の時代から証券取引法にかかわっている実務家でないと、おそらく、金融庁の誰一人とっても、知らないでしょう。

知っているか知らないかはともかく、30年前に大蔵省から法定帳簿作成の手引きが出ているからといって、金商法が、いつ、どんな場面で法定帳簿を作成しなければならないかを明らかにしないで良い理由にはなりません。が、現実として、金商法は、法定帳簿の作成については、極めて不親切です。

<法定書面>
法定帳簿は、証券取引法から金商法に変わったときに、大幅に数が増えました。契約締結前交付書面など、「法定書面」といわれるもの(又は写し)が、法定帳簿に加わったからです。

ただ、現実問題として、法定帳簿といえば、金商業等府令の順番に従うと、「注文伝票」以下の帳票類を指します。

<注文伝票の作成部署と保管部署>
現在の実務として、金商業者になろうとする登録を受ける際、申請者(金商業者となる者)は、法定帳簿の作成部署や管理(保管)部署を紙に書いて財務局に提出することになっています。

ここで、多く見られる「間違い」は、「注文伝票の作成部署と保管部署は営業部門とする」というものです。

行政書士の中で金商法を本当にわかっている人は皆無に近いですので、登録申請書の作成・提出代行を行政書士に任せても、この間違いをすることが多い、というか必ずします。

注文伝票の作成部署と管理部署が同じということは、理論的にあり得ません。

注文伝票は、金商業者の中における「伝票」です。誰かが誰かに伝えるための帳票だということです。だから、注文伝票が作成され、内容が誰にも伝えられずに、作成部署が保管するということは、あり得ないのです。

注文伝票の作成部署と保管部署を考えるときには、金商業者の組織を考えなければなりません。

注文伝票は、注文を受けたときに(受注したときに)、速やかに作成を始める義務があります。これは、条文どおりです。注文を受けるのは営業部門(又は売買部門)ですから、注文伝票の作成部署は、営業部門になります。

営業部門は、何のために、注文伝票を書くのか?もちろん、誰かに内容を伝達するためです。では、誰に伝達したい、伝達しなければならないのか。答えは、業務部門(決済部門)です。

取引を成立させるのは営業部門ですが、営業部門が行った取引の決済を行うのは業務部門です。だから、営業部門は、注文伝票という「伝票」を作成して、管理部門の業務部門に取引の内容を伝達しなければならないのです。

余談ですが、財務局の担当者の中に「取引が法令上問題ないかをチェックするために、取引を成立させるときには、コンプライアンス部門が関与しなければならない」と考えている人がいますが、大きな誤解です。

取引は営業部門が誰からの干渉も受けずに成立させることができるものです。営業部門は、会社(代表者取締役)から、取引を成立させるための全権限を委任されているからです。そうでなければ、取引相手(投資家)は、安心して金商業者の営業部門と取引ができません。したがって、取引の成立にコンプライアンス部門が関与せよ、という考えは投資家保護に反するのです。

この議論は、金融庁も交えて、既に2003年当時に決着がついています。もう、誰も知らないでしょうが、注文伝票に関するこの議論(営業部門に取引成立の全権限が委任されることの是非に関する議論)は、金融庁の中で決着がついているのです。

なお、コンプライアンス部門が登場するのは、研修(事前教育)や取引のモニタリング(事後チェック)のときです。

閑話休題。

<業務部門>
取引が成立すると、当然、売買の決済が行われます。この決済部門のことを業務部門といいます。

業務部門は、当然のことですが、営業部門でどのような取引が行われたかわかりません。だから、「注文伝票」が必要になります

これも当然のことですが、営業部門が決済部門を兼任することはできません。それどころか、日銀によると、営業部門は決済部門のオフィスに入る権限を持ってはならないというということです。不正の温床になるからですね。不正の温床の意味は、ベアリング事件(ニック・リーソン事件)で、有名です。

業務部門は営業部門から受け取った注文伝票に沿って、売買の決済を行います。

<注文伝票と金商業者の組織>
以上のことから、金商業者(一種業者と二種業者)には、営業部門と業務部門の設置が必須です。現実を見ると、業務部門を設置していない二種業者が多数見られますので、財務局には、ベアリング事件を踏まえ、業務部門の設置と独立性に関する慎重な登録審査をすることを強く望みます。

金商業者には、営業部門(売買部門)と業務部門があって、営業部門と業務部門の周りに、コンプライアンス部門、内部監査部門、経理部門が配置されなければなりません。総務部門や人事部門は、また、別の組織であることが必要ですから、金商業者には、最低でも、6部門は必要です。

これは、私の考えではありません。2000年当時に、金融庁も交えた話し合いで決まった決定事項です。営業部門と業務部門を「必須部門」、コンプライアンス部門、内部監査部門、経理部門は「コア部門(内部管理部門)」、総務部門や人事部門は「ノンコア部門」と当時名づけられました。

金商法になってこの考え方は変わったか?

いいえ、金商業等府令を見ればわかるように、「内部管理部門」は依然として定義されています。また、ノンコア部門は、親子法人の定義規定に今でも規定されています。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

プロフィール

川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。JSL行政書士事務所代表。

JSL行政書士事務所は、200社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

メールマガジン:、読者数国内最多の金融商品取引法専門メールマガジンを金融商品取引業者と金融当局に配信中

JSL行政書士事務所代表
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-3-2 郵船ビルディング1階
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