当局検査の実務(1)


号外として、検査の話をしましょう。私は、金融庁と証券取引等監視委員会の検査を細かいものを入れるとのべ10回以上受けていますので、検査経験も踏まえて検査対策を中心にお話することにします。なお、財務省管轄の金融商品取引業者等の検査については、金融商品取引法で、証券取引等監視委員会が管轄財務局に検査権限を委任しています。

<検査に対する見方>
金融商品取引業者等の中で、まだ検査を経験したことがない方は、検査がどのようなものわからないために、大きく2つの傾向が見られます。一つは、検査にまったく関心がない会社。「どうにでもなる」と考えている会社です。もう一つは、「今の体制では検査が入ったら耐えられない」と焦っている会社です。超楽観派か超悲観派です。私が受けた問合せの中では、今のところ、中間はありません。

<楽観派>
楽観派の方には「甘く見たら会社は倒産する」と“事実”を伝えています。金融商品取引法の施行後、公表されているだけでも、10社以上が倒産に追い込まれています。未公表の分も含めると、検討が付かない数の会社が倒産しているはずです。

最近検査官と話したところによると、検査対象企業は、現在、約6000社あるということです。半端な数字ではないですが、証券会社の数は約300社と限られていて、ほとんどの会社は、金融商品取引法の施行後に金融商品取引業者等として初めて登録した会社だということです。このため、検査官の人員配置も、当然のことですが、証券会社よりも第二種金融商品取引業の登録を受けた宅建業者やファンド運営会社に重点が既にシフトしているということです。

結果として、会社の規模の大小にかかわらず、人数が5名程度の小規模の金融商品取引業者等にも検査は入っていることが、監視委員会や財務局のホームページで確認できます。対象業種も多岐にわたり、不動産信託受益権の売買を行う宅建業者は珍しくなく、私はかなり先になるだろうと読んでいた馬主会の運営会社にまで検査が入っています。

楽観派の傾向として私が最も懸念している点は、検査期間中に日常業務ができると勘違いしていることです。当然のことですが、検査官は検査期間中、業務の妨害はしません。ただ、冷静に考えればわかることですが、検査が入った金融商品取引業者等は、日常業務に追加して検査官に対応することになり、追加の時間が必要になります。

検査官は、毎朝9時過ぎに来て、遅くても6時には帰ってしまいます。要するに営業時間中に検査が行われますので、検査期間中は、よほど余裕の職員がいない限り、日常業務に影響が出ます。検査は、主に、検査官と役員や職員とのインタビューで進められます。1回1時間のインタービューであれば、一日1時間は日常業務から離れてインタビューに対応することが必要です。検査官とのインタビューは、やむを得ない場合には、別の日に変更してもらうことができますが、受けないという選択肢、拒否権はありません。また、刑事事件では黙秘権があっても、行政検査に黙秘権はありません。拒否すれば、検査忌避となり、最悪の場合懲役刑です。それだけ、金融商品取引業者等の役職員は、重い責任を負っているということです。

「多忙な時期なので検査時期をずらしてもらうことはできないか」という質問を受けることがありますが、私の知る限り、数日ならともかく、月単位でずらしてもらうことはできません。なぜかというと、検査は、税金で行われているため、検査計画通りに執行されなければならないという宿命があるからです。

検査官のしつこさに、怒鳴ってしまった社長の話を聞いたことがあります。この検査は、この時点でゲームオーバー、会社の負けです。怒鳴る行為は検査忌避だからです。検査官がしつこいのは、事実を突き止めるための当たり前の話で、それを拒否するような怒鳴る行為は、検査忌避ですから注意が必要です。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

コメント

非公開コメント

プロフィール

川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。JSL行政書士事務所代表。

JSL行政書士事務所は、200社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

メールマガジン:、読者数国内最多の金融商品取引法専門メールマガジンを金融商品取引業者と金融当局に配信中

JSL行政書士事務所代表
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-3-2 郵船ビルディング1階
電話:03-5533-8785
http://office-jsl.com/

<お問い合わせ>
お問い合わせは、お問い合わせフォームで受け付けます。

<主な業務>
主な業務は、主な業務をご覧ください。

ブログの内容は個人的見解ですので、正確性は保証いたしません。また、ブログの内容に関する質問を含め、質問には一切回答いたしかねますので、ご了承ください。

プライバシーポリシー

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
Translation
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード