金商業者の検査


4月に入りましたので、例年であれば、これから金融庁の異動の時期である7月前まで、証券取引等監視委員会の検査が活発になるはずです。

<検査対策>
「検査対策の秘策は?」と聞かれることがありますが、正直言ってありません。日頃のコンプライアンス部門による取引のモニタリングや社内研修、内部監査部門による内部監査、最も重要なこととして、経営者による内部管理態勢の定期的な確認などを通じて、内部管理態勢の維持・強化に努めるほかありません。

クライアントを見ていますと、内部監査が難しいようですが、部門監査(縦型監査)や項目監査(横型監査)を実施するようにしましょう。

<二種業協会>
新規登録者の二種業協会への加入が促進される改正法が間もなく施行されます。「入るか、入らないか」という議論がまだされているようですが、選択の余地なく、入るべきです。

証券会社は、日本証券業協会に加入していますが、金商法上、加入の義務はありません。平成26年改正金商法の二種業協会同様、証券会社も社内規則を整備すれば加入しなくても良いことになっています。ですが、日本証券業協会に入らない証券会社を私は聞いたことがありません。

平成7年だったか、私が銀行で証券業務のコンプライアンスを担当していたとき、突如、「銀行も日証協に入会すべし」というお達しが日証協から出ました。当然、銀行は猛反対。銀行の業務のうち、証券業務の占める割合は1万分の1もなかったからです。

私は、加入反対派の急先鋒でした。ですから、二種業協会に加入したくない(会費が高いとか、何の役に立つのかわからないとか)という気持ちは他人事ではなくよくわかるのです。

当時は、全銀協が「第二協会を作る」と言いだし、第二協会構想もまとまりかけたとき、大蔵省(当時の監督・検査当局)の指導により、結局、銀行も日証協に入ったという歴史があります。

セミナーの講師をするときにも言っていますが、確かに、二種業者の場合、全体の業務に占める金商業の割合がかなり低いことが多いです。場合によっては(金商法上許されているかどうかは別にして)、二種登録はしているけれども取引件数がゼロという会社も珍しくありません。

でも、です。金商法(金融庁)から見れば、二種登録をしている会社は、金商業の占める割合に関わりなく金商業者なのです。例えば、宅建業者であって不動産信託受益権の売買の媒介のためにのみ二種登録をしている会社であっても、金商法から見れば、この会社は、宅建業者ではなく金商業者なのです。

この感覚、つまり、金商業者として登録を受けた以上、金商法から見れば、本業が何であっても、金商業者にしか見えないという感覚を身に付けることは、金商法の傘下に入ってしまった以上、重要なことです。

てこの原理ではありませんが、小さなポーションであっても、金商業における法令上の失敗が、本体(本業)の存在をも揺るがしかねない事件になり得ます。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

プロフィール

川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。JSL行政書士事務所代表。

JSL行政書士事務所は、200社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

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JSL行政書士事務所代表
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-3-2 郵船ビルディング1階
電話:03-5533-8785
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