証券取引等監視委員会検査-150601号外


私がコンプライアンス部門を初めて担当したとき、当時は事前届出だった営業所の開設手続を私がやっていなかったばかりに、営業所の開業が予定より3日遅れたことがありました。

「これはまずい!」と思った私は、取締役の変更などイベントを横軸に、金融庁や日証協などアクションを起こす対象機関を縦軸にとった表を作り、さらに、項目ごとに、届出書記載サンプルを作って、ファイルにまとめました。

かなり分厚いファイルになりましたが、私が転職して辞めた後も、金商法の施行まで使われたと聞いています。

金融商品取引業者のコンプライアンスの基本として、マニュアル作りは非常に大事です。

<届出漏れワースト3>
証券取引等監視委員会の検査において、金商法第31条第1項、同第3項、第50条第1項などで義務付けられている届出がされていなかったことが発見されれば、当然、即、法令違反です。

検査のためというわけではありません、金融商品取引業者にとって、届出漏れのないようなコンプライアンス体制の整備は必須です。

私の知る限り、届出漏れワースト3は次の通りです。

1 親法人等・子法人等の届出

2 役員・政令で定める使用人の肩書変更の届出

3 定款変更の届出

親法人等・子法人等の届出漏れは、常に、ワースト1の座をキープしています。条文で言うと、金商業等府令第199条第3号です。

親法人等には、親法人の子法人、つまり、兄弟姉妹会社も親法人等に含まれる広い範囲の概念です。

役員・政令で定める使用人については、人が変わったときには届出がされていても、人は変わらないんだけれども、役職名だけが変わったときに届出がされていないケースが目立ちます。

他にも、業務方法書で「別に定める」とか「別紙」として指定した社内規則の変更に係る届出漏れも散見されます。「別に定める」とか「別紙」として指定した社内規則は、業務方法書の一部であることから、変更した場合には、業務方法書の変更届が必要と言うのが、金商法施行以降の金融庁の考え方です。

<遅延理由書>
届出漏れは法令違反ですから、金商法施行前(証取法時代)は、すべて「事故届」(金商業等府令第199条第7号及び第8号)が必要でした。

金商法施行後は、金融庁、特に、財務局による業者規制の運営が緩すぎるくらい緩くなってしまったので、「遅延理由書」という法令に規定のない書類の提出で、届出漏れが治癒されるという不思議な現象が起きています。

要するに、金融庁や財務局の担当者のさじ加減と言うわけです。

金融庁は、それでも、遅延理由書に加えて、届出漏れのあった金商業者を呼びつけて実態調査をしますが、財務局は、なんと、何もしません。

業者規制の運営の緩和は、金商業者のコンプライアンス意識の低下につながります。金融庁は、財務局の業者規制の運営状況を調査し、金融庁並みの運営を求めていくべきです。

遅延理由書で金商業者が注意しなければならないことは、遅延理由書の中で「再発防止策として、こういうことをします」と
書いたときには、必ず、書いた再発防止策を実行するということです。

事故届と遅延理由書は、証券取引等監視委員会の検査において、提出を求められますので、もし、再発防止策を講じていなかった場合、虚偽の報告をしたとして、業務改善命令が出る可能性があるからです。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

プロフィール

川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。現在、JSL行政書士事務所代表。多数の金融商品取引業者の顧問に就任。

JSL行政書士事務所は、100社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

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JSL行政書士事務所代表
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