証券取引等監視委員会検査-150603号外


金商法は内閣府令を入れれば膨大な量の法律だし、複雑だし、毎年改正されるしで、金商業者のコンプライアンス担当者の方は、追うだけでも大変だと思います。

ただ、残念ながら、検査の中心に立つのはコンプライアンス担当者であり、指摘事項があると責められるのもコンプライアンス担当者です。

だから、コンプライアンス担当者は、「検査は会社じゃなくて自分がされている」という意識が必要です。事実、そういう側面があります。

<損失補てん>
損失補てんの禁止義務規定(金商法第39条、違反は刑事罰)は、一種業者と二種業者に適用されます。助言業者や運用業者には特別な受託者責任があるため、適用がありません。

損失補てんは、取引の前に顧客と将来の損失補てんを約束する行為(事前約束)、取引の結果、顧客に損失が発生したときに補てんすることを約束する行為(事後約束)、実際に顧客の損失を補てんする行為(実行行為)の3場面で禁止されています。

典型的には、一種業者・二種業者の私募の取扱いや売買の媒介を通じて有価証券を取得し又は買い付けた顧客が、有価証券を転売したときに生じる損失に対して、損失補てん行為をすることが法令違反になります。

では、このような場合には、どうでしょうか。

発行者である営業者と投資家との間で締結される匿名組合契約において、投資家が解約の請求をしたときには、発行者は営業者に元本を全額返済すると規定されていた場合に、二種業者が、全額返済規定の説明を顧客した上で、顧客に匿名組合契約出資持分(TK持分)を取得させた場合

このような契約を実際に見たことがあります。

「元本保証の出資金の預け入れは出資法違反では?」という議論は、営業者に関する話ですので、今回は考察しません。

元本保証のついTK持分の私募の取扱いをした二種業者は、損失補てんのうち、「事前約束」をしたことにならないか、という問題です。

正解は、「なり得る」です。

実際、特別な社債の私募に際してですが、同じようなケースが損失補てんと指摘され、業務改善命令及び役員解任命令まで追い込まれた証券会社があります。

<すべてのアクティビティの検証>
禁止規定がどのような場面で適用されるかを検証することは、コンプライアンス担当者にとって、とても重要なプラクティスです。

禁止規定が適用される場面は、金商法が想定している場面においてばかりとは限りません。だから、コンプライアンス担当者は、会社が行っているすべてのアクティビティを把握し、検証し、金商法の当てはめを行わなければなりません。

このようなプラクティスを行うとき、コンプライアンス担当者に求められるのは、想像力です。想像力がないとコンプライアンス担当者は務まりません。アクティビティに潜んだ法令違反に気づくことができない場合があるからです。

想像力を発揮するためには、何を置いても、金商法の条文の正確な理解と記憶力が必要です。特に、金商法の禁止規定は何度も何度も読んで、自家薬篭中の物にしておかなければなりません。

テーマ : 金融商品取引法
ジャンル : ファイナンス

プロフィール

川崎善徳

Author:川崎善徳

<ブログの紹介>
金融商品取引法の体系としては、「金融商品取引法」、「金融商品取引法施行令」の他に、「定義府令」、「企業内容開示府令」、「特定有価証券開示府令」、「証券情報提供府令」、「金商業等府令」、「取引等規制府令」、「開示ガイドライン」などがあります。つまり、膨大だということです。

ただし、金融商品取引法が対象としているものは、2つしかありません。「有価証券」と「デリバティブ取引」です。これ以外のことを金融商品取引法は対象にしていません。また、金融商品取引法の規制には、3つの種類しかありません。「開示規制」、「業者規制(行為規制)」、「不公正取引規制」です。先に挙げた内閣府令はすべて(例外なく)、この3つのいずれかに関連しています。

開示規制は、上場会社や公募債発行の経験あるいは予定のある会社に関わる規制です。業者規制は、金融商品取引業者はもちろん、自主規制機関にも関わる規制です。不公正取引規制は、すべての人(個人・法人、居住者・非居住者を問わない)に関わる規制です。このため、膨大かつ難関な法律とされています。

このブログは、膨大かつ難解な金融商品取引法を、実務経験と知識に基づき、実務に役立つように、やさしく解説している、金融商品取引法の実務に関する日本初の、情報量で国内最大のブログです。

<プロフィール>
川崎善徳。1988年、慶應義塾大学文学部卒業、住友信託銀行に入社。1992年から証券業務のコンプライアンスを担当。1999年、転職し、アセットマネジメント会社や銀行のコンプライアンス部門を経て、BNPパリバ証券コンプライアンス部長、新生証券取締役コンプライアンス部長を歴任。2004年、行政書士登録。JSL行政書士事務所代表。

JSL行政書士事務所は、200社以上の金融商品取引業者との取引経験に基づき、金融商品取引業者の監査とコンサルティングを実施するコンサルティング・オフィス。また、金融商品取引業者のM&Aのアドバイザー、社内研修の講師、セミナーの講師も行っている。顧問契約を締結している金融商品取引業者は、証券会社(一種業者)、不動産信託受益権販売業者(二種業者)、事業型ファンド販売会社(二種業者)、不動産信託受益に関する助言業者(助言業者)、株券に関する助言業者(助言業者)、不動産AM(運用業者)他と多様な業種に及ぶ。

著書・雑誌:「金融商品取引法の基本がよくわかる本」(中経出版)、「金融商品取引法対応マニュアル」(住宅新報社)、「プレジデント」(取材)、「週刊金融財政事情」(取材)他

社内研修:東証一部上場会社、ジャスダック上場会社、上場会社の子会社、独立系企業、外資系企業と多岐にわたる金融商品取引業者の依頼に応じて日本全国で役員研修・社員研修を実施

セミナー講師:「投資助言業者のための検査対策」(金融財務研究会)、「第二種金融商品取引業者のための検査対策」(金融財務研究会、金融ファクシミリ新聞)、「第二種金融商品取引業者のための効果的な内部監査」(金融ファクシミリ新聞)

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JSL行政書士事務所代表
〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-3-2 郵船ビルディング1階
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